先の辻中さんは言う。

「コレクターは、集めてきた大切なコレクションを次世代につなぐ『魂のリレー』を大事にする。亡くなった後で家族にもしっかり伝わるように、見積書を遺言書に入れていただけるようになれば最高です」

 今や日本は生まれてくる赤ちゃん(約98万人)より、亡くなる人(約131万人)のほうが多い「多死社会」に突入している。親の死や介護をきっかけに直面するのが「実家の片づけ」だろう。家具や家電製品など大量のモノは、ゴミとなり片づけに苦労する。しかし、あふれたモノの中に「お宝」は眠っている。実家は、「宝の山」だ。

 8月中旬、都内に住む女性(66)は、夫(70)の実家の片づけに立ち会った。昨年10月、義母が94歳で亡くなり、実家の建物は義姉が相続し、別の場所に暮らす弟である、夫が家財道具一式を相続した。義父は17年前に亡くなっているので、夫の実家は1年近く空き家となっていた。そろそろ片づけなければならなくなり、ネットで見つけた「遺品整理プログレス」(本社・京都市)に片づけをお願いした。

●ゴミと思ったけれど

 貴重品はすでに持ち出しているので実家はゴミだらけ、お金になるものなんてないわ──。女性はそう思っていたが、作業員6人が隅々まで片づけた結果、押し入れや台所などから次々と「お宝」が出てきた。ハーモニカ、食器、掛け軸……。その場で見積もった結果、ハーモニカと食器セットが各5千円、一式で1万2千円の値がついた。これを片づけ費用の約25万円から差し引いてくれるという。女性は笑顔で話す。

「期待していなかったので、うれしいです」

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