「演技をしている、と観客が感じてしまうのなら、そこに真実はないと思うから」

 クールにサバサバと質問に答える彼女が声を弾ませたのは、昨年公開された主演作「未来よ こんにちは」が日本でヒットした、と伝えたときだ。

「聞いたわ! あれはとても良い作品よ」

 若い才能をどのように見つけるのかと問うと、自身が出演した作品の監督の、フランスでの評価を事細かに教えてくれた。女優であるだけでなく、目の肥えた「観客」でもあるのだ。

●一人で是枝を訪ねて

「自分が役をどう演じるかよりも、どんな監督と仕事をするかのほうが大事」

 というのが持論で、フィリピンや韓国の鬼才たちとも仕事をしてきた。ユペール自身がファンであると公言し、日本で行われた「ウーマン・イン・モーション」のトークにも登壇した映画監督の是枝裕和は、仕事でパリを訪れた際、彼女がたった一人で是枝の元を訪ねてきたというエピソードを明かしている。

 興味がある監督には、自らコンタクトする。好きなものは好きと言い、誰にも媚びないその姿勢は、作り手たちにインスピレーションを与え、そこからまた新たなキャラクターが生まれる。「『あなたにしかできない』という役が増える一方で驚きます」と伝えると、

「あら、その逆じゃなくて良かった(笑)」

 とさらっと一言。口角をきゅっと上げた。(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2017年9月4日号