「撤回」が流行? “政治家の失言”その裏にある本質とは

2017/08/10 11:30

●飲食店の喫煙問題巡り

 もう一つの「非撤回」組は今年5月、自民党の厚生労働部会で大西英男衆院議員が発した「働かなければいいんだよ」発言だ。部会はマスコミなどへ非公開で、受動喫煙対策について「建物内は原則禁煙」を目指す厚労省案と緩やかな自民党案の議論が行われた。問題の発言は、小規模飲食店での喫煙問題についてのもの。厚労省案を推す三原じゅん子参院議員が「本当に自分の命がかかっていて治療している中で、その仕事場が喫煙されているところで働くことの苦しさというのはどういうものがあるか」と発言した直後のヤジだった。三原議員は「働かなければいいという、そんな話がありますか? がん患者はそういう権利がないんですか?」と応戦。大西議員はすぐに「そんなことは言ってない」と応じたが、「(がん患者は)働かなくていい」という発言としてメディアにのり、大西議員は謝罪した。

●撤回は信条からの逃げ

 大西議員に改めて取材を申し込むと、文書で返答があった。

「私の発言の前に行われている受け止め手の議員の方のお話自体が、『喫煙・非喫煙の表示義務を課したうえで、極めて小規模の飲食店に喫煙を認めたとき』に限定された話。私の発言に補足をするなら、『(極めて小規模な飲食店で喫煙を認めたとして、そこで無理して)働かなくてもいい』のはずですが、がん患者全体、オフィスを含めたあらゆる職場における発言をしたように受け止められています」

 真意がそうだとしても、やはり配慮に欠ける発言ではある。大西議員もその点を認め「がん患者などの方々の気持ちを傷つける結果となったことをお詫びしました」としたうえで、語る。

「(がん患者は)働かなくてよいという趣旨での発言をしてはいないので、発言自体は撤回していません。また撤回したら、あとあと私の政策や信条とつじつまがあわなくなります。小規模飲食店での就労を受動喫煙で敬遠せざるを得ない点については、仕事と治療の両立を掲げる働き方改革の中で就労支援や再就職支援の充実などが重要と考えています。私はこういう主張を報道当初からずっとブログなどで続けてきました」

 この意見にも賛否両論はあるだろう。ただ、少なくとも失言を撤回しないことで、大西議員のスタンスや意見がはっきりしたことは確かだ。そのことへの審判は、選挙でしっかり下すというほうが、「失言」に対する健全なあり方ではないか。
 ある自民党関係者は、「失言を撤回するのは、そのほうが楽だから」と言う。政治家に自らの政治信条表明から逃げる「楽」をさせないためには、メディアも有権者も「撤回」という言葉をより慎重に扱う必要がある。

(編集部・福井洋平)

AERA 2017年8月14-21日号

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