ED治療は内服薬が主流。しかし、EDと自覚しても受診をためらい、インターネットでED治療薬を「個人輸入」という名目で購入する人もいる。個人輸入の薬には偽造品も混じり、健康被害が起きるリスクもある。

●ネット購入4割が偽物

 前出の佐々木医師の元を訪れた50代男性が「知人からネットで買ったED治療薬をもらって飲んだけど効かなかった」と言って取り出したのは、「C50」の刻印のある黄色の錠剤だった。

「シアリスの偽造品です。実は正規品は20ミリグラムまでしかありません。偽造医薬品は何が含まれているかわからず、覚醒剤の一部や殺鼠剤などが入っていることも。過去には低血糖状態で意識喪失を起こして搬送された例もあり、命を落とす可能性もあります」(佐々木医師)

 治療薬を製造・販売する4社(ファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリー)が16年に実施した合同調査によると、日本とタイのネットの販売サイトからED治療薬を購入し、鑑定したところ、約4割が偽造品だった。有効成分を全く含まないものや他の成分が入ったもの、不純物を含むものもあったという。ただ、外見は正規品と酷似していて、ネット上では「海外製のジェネリック医薬品」などと偽って販売されており、見分けるのは難しい。

 バイアグラを製造するファイザーの広報担当者はこう話す。

「中国で摘発された製造現場は非常に不衛生な環境でした。偽造医薬品は健康被害以外にも、個人情報の流出やスキミングの被害の報告もあります。ただ、目視してもどれが偽物かはわからないため、病院へ行って処方してもらうことが安全です」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2017年7月24日号