日本人との違いも強く感じる。「リスク分散への理解度」と「判断の主体性」だ。

「日本人は何事にも完璧主義で、リスクを取りたがらない」(スィンハさん)。元本割れするのが嫌だから預金しかしない。しかし「一つの資産に集中することこそリスク」と話す。

●皆で流れて皆で損する

 なぜインド人はリスク分散に慣れているのか。スィンハさんは面白い見方を教えてくれた。

「インドでは、電車やバスが時刻表通りには来ないので、常に最善の場合と最悪の場合を想定し、自分の行動を決める癖がついています。日本人は『乗り換え案内』にお任せできる分ラクですけど、想定外の事態を考えることには慣れていませんね」

 また他人の判断に流されやすいのも日本人の特徴とみる。

「日本人は儲かると聞くと、商品のことをよく知らなくてもみな一斉に買う。商品自体というより、知らずに買うことがハイリスクなんです。結果的にある時点でドーンと下がってみんな慌てて売って損をする。そして、『預金が一番』となってしまう」
「もっとリスク分散を」

 対照的に、他人と同じことをするのを嫌い、自分独自の判断に自信を持っているのがインド人だとスィンハさんは言う。

「家族や友達同士でしょっちゅう株や資産運用について話します。小さい頃から、大人のそういう話を聞いているので、自然と知識も身につく」

 スィンハさんは大の親日家。安くて高品質な物が手に入る日本は「資産を増やさなくても、しばらくは幸せに暮らせるかも」としつつ、こう言った。

「友人として、長い目で見れば、日本の人はもう少しリスク分散の考え方に慣れたほうがいいのではないですか」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年7月17日号