インド伝統の透かし模様のピアスをつけたベラさん。金の宝飾品は母から娘へと受け継がれていく(撮影/伊ケ崎忍)
インド伝統の透かし模様のピアスをつけたベラさん。金の宝飾品は母から娘へと受け継がれていく(撮影/伊ケ崎忍)
インドの家庭では、金庫は必需品。特別な日につけるものや思い出の品は銀行の貸金庫に保管しておく(撮影/伊ケ崎忍)
インドの家庭では、金庫は必需品。特別な日につけるものや思い出の品は銀行の貸金庫に保管しておく(撮影/伊ケ崎忍)

 日本海にまた北のミサイルが着弾した。覇権国家アメリカでは“CNN”にラリアットする男が大統領だ。いつの世もリスクはつきものだが、いよいよニッポンもきな臭くなってきた。そんな時代に我が家の家計を、資産をどう守るか。AERA 2017年7月17日号では「中国とインドのお金を守る方法」を大特集。苦難を乗り越え今に至る、インドの「金投資」から知恵をいざ、学ばん。

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 3千人ものインド人が暮らす「東京のリトルインド」、江戸川区西葛西にあるマンションの一室。繊細な刺繍が施された上品なサリー姿で出迎えてくれたベラさん(64)が「ほんの少しですけど」と言いながら、手持ちのジュエリーを見せてくれた。まばゆい光を放つ透かし模様のピアスや、ルビーなどと組み合わせた豪華な腕輪。ほぼすべてがゴールドだ。

「日本では、金のジュエリーをたくさんつけて出かける機会が少ないので、ほとんどはインドの家にあります。80以上はあるでしょうね」(ベラさん)

 隣で、真っ白な長い顎髭をたくわえ、微笑みを浮かべているのは夫のジャグモハン・チャンドラニさん(64)。紅茶販売やレストラン経営などを手がける実業家で、西葛西のインド人コミュニティーの「顔役」でもある。

●儲けるという感覚ない

 チャンドラニさんによれば、インド人にとって伝統的な資産防衛策は金の購入。来日39年のチャンドラニさんだが、金による資産防衛はずっと続けてきた。買うのは延べ棒ではなく、妻や2人の娘たちが使う耳飾りや腕輪など。誕生日や家族の記念日、ヒンドゥー教の祭りの日など何かにつけて買うという。

「インドの国民の6割は農民で、地域の祭りなども多い。だからインド人は毎月のように金を買う。もちろんどんなジュエリーが欲しいかを決めるのは女性たちで、男は言われるがまま、ハイハイと従うだけ(笑)」

 それにしても、なぜインド人はそこまで熱心に金を買うのか。そう問うとチャンドラニさんの大きな目に心なしか力が入った。

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