──相続税還付は過払い請求みたいなものですか?

高原:相続税は自己申告制度なので明らかな過払いとは言い切れませんが、払い過ぎていた相続税を取り戻すという意味では似ています。昨年の実績でいうと、10件中7件くらいの割合で、還付の可能性が出ています。相続税の経験が少なくても、顧客から依頼されれば税理士も引き受けざるを得ず、慣れない申告の中で土地の評価額を高く計算しすぎているケースが多々ある。正直、税務署OBの税理士さんでも、土地評価をはじめ相続のことを完全に把握している方は少ない。だいたい、不動産絡みの相続案件はかなりの確率で還付が受けられます。私たちが担当した例で言いますと、5億円の相続税を納付したのち、2億4千万円の還付を受けた方がいました。その方は、アパートが立っている大きな土地を持っていたのですが、当初の申告では、その土地の広大地評価(三大都市圏の市街化区域内なら500平方メートル以上の土地で、開発時に道路などの潰れ地が生じる際に最大で土地の評価が65%下がる)の適用を断念していました。しかし、様々な調査をふまえて再検討し、不動産鑑定士の評価意見書を提出することで広大地評価が認められたんです。

福留:うちも還付の案件は増えていますね。最近も1億円以上の還付を受けられた方がいました。もちろん、相続税申告を担当された税理士さんの経験不足もあるかと思いますが、土地の評価や名義預金の判定などは、相続税の申告を専門としている税理士すら悩むことが多いんです。メインの業務が法人顧問というような一般的な税理士事務所じゃ、申告に不備が生じてしまうのも仕方ないかもしれませんね。だから、セカンドオピニオン的に相続の中でも土地の処理に関してのみ、うちを頼る税理士さんも増えました。

●区分所有オフィスを販売

──では、最近の旬な節税対策などはあるでしょうか? 昨年は“タワマン節税”が脚光を浴びました。

寺町:タワマン節税は、旬は過ぎていないと思います。タワマンは、実際に取引されている価格に対し、相続税評価額が著しく低いため、これを生前に購入すれば相続税の節税効果があります。この相続税の節税効果は高層階の物件であるほど顕著になりますので、そこに目を付けた富裕層の方々がタワマンの高層階の物件を生前に購入して相続税の節税対策をしています。この“抜け穴“が問題視されて、節税封じの税制改正が行われると思ったのですが、結局、高層階の固定資産税は引き上げられるようになったものの、相続税は今までのままです(笑)。規制が入るというイメージが先行して、相続税対策で買おうと思っている人は、これまでよりは減った印象ですが、節税効果はまだまだ高いです。

次のページ