「4条件」とは、2015年に閣議決定された獣医学部新設についての条件で、既存の獣医学部では対応できない新たなニーズに応える獣医師を養成する場合、新設を認めるというものだ。獣医系大学関係者は、こう反発する。

「加計学園の提案は従来の獣医学部ですでに対応できている内容だ。新たな分野への対応として動物由来新興感染症対策などが挙げられているが、これもすでに実施している。4条件を満たして獣医学部を新設しなければならない内容は見当たらない。『全国展開』という発言は苦し紛れにしか見えない」

 国会閉会後の会見で安倍首相が「公務員獣医師の確保は喫緊の課題」と述べるなど、新設の理由に獣医師不足を挙げる声もあるが、政府は「地域の偏在はあるが、現状において、獣医師の数自体が全体的に不足している状況にはない」(農林水産省の小川良介参事官)などの見解を示している。日本獣医師会顧問の北村直人元衆院議員は、安倍首相の発言を「まったく無知な発言だ」と語気を強める。

「公務員獣医師不足を解消するには待遇面の改善などが必要。数を増やせばいいわけではない。昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で初めて『広域的に獣医学部が存在しない地域に限り』と文言が入り、これは加計ありきだと感じた。獣医師会が昨年12月に『1校限りにしてほしい』と要請を出した真意は、千葉県成田市の国家戦略特区での医学部新設の前例にならい、需給バランスを狂わせないためにも、1校にしてほしいという意味だ」

 閣僚や自民党議員の失言が止まらない。政治ジャーナリストの角谷浩一さんは、こう指摘する。

「加計学園問題が収束せずに支持率の低下に歯止めがきかなければ、来年に衆院議員の任期満了が迫るなか、内閣支持率の回復を待つより、総入れ替えを求める声が党内から出る可能性もある」

 国会閉会後こそ、「何か指摘があればその都度、真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と低姿勢を見せた安倍首相だが、野党の閉会中審査要求に応じる気配もない。

(編集部・澤田晃宏、長倉克枝)

AERA 2017年7月10日号