加計学園問題を根底からひっくり返すかもしれない、安倍晋三首相の発言が飛び出した。内閣支持率が低下し、安倍一強が揺らぐ中での焦りなのか。
それは東京都議選まっただなか、6月24日のことだった。
「中途半端な妥協が国民的な疑念を招く一因となった。(愛媛県)今治市に限定する必要は全くない。速やかに全国展開を目指したい」
神戸市の講演会での安倍首相の発言が波紋を呼んだ。
「これまでの説明を根底からひっくり返す発言」(民進党の野田佳彦幹事長)、「自分の疑いを晴らすために国の政策を根本的に変えるみたいな、すさまじい話」(共産党の小池晃書記局長)
●火に油を注ぐ発言
獣医学部の新設を提案していた京都産業大学の関係者は、本誌の取材にこう語った。
「コメントのしようがない。本学は突然、『広域的に』『限り』という文言が入り、断念せざるを得なくなった経緯がある。まともに受け止められない」
ある自民党関係者も「都議選もすでに始まっている中、再び加計(かけ)学園問題を刺激する。最悪だ」と愚痴をこぼした。
加計学園問題の追及を避けるために、本会議での中間報告という強引な手法で「共謀罪」法を強行採決し、国会を延長せずに会期末で閉会。皮肉にも安倍首相が自らの発言で、火に油を注ぐ結果になった。政治ジャーナリストの鈴木哲夫さんは、
「東京の特徴は無党派層が多いこと。流動人口も多く、政策そのものより、ときの政治の風の影響が大きい。自民党候補者には一番触れてほしくない問題を再炎上させてしまった」
安倍首相の発言は、「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園に便宜を図ったのではないかという疑惑のみならず、獣医学部新設の経緯にも疑問を投げかけた。
●まったく無知な発言だ
安倍首相の発言を受け、菅義偉官房長官は記者会見で、今後の獣医学部新設について「4条件に照らし、整合的かどうか検討することになる」と述べた。