「今後、業界は伸びるはず」

 そんな強い確信を持ち、知ったのがエンルートだった。もともとラジコン部品の輸入販売会社で、11年から産業用無人機の開発を開始。錢谷は13年、同社に転職した。

 現在は、測量会社や建設会社などから要望を受け、適した無人機を提案し、現場で運用するまでの一連の作業を行う。今は社員33人と3倍以上に増えたが、かつては人手が足りず、錢谷も機体の製造を手がけていた。

 国内の開発メーカーは10社もない。自治体などと災害時の支援協定を結んでおり、有事の際は昼夜問わずすぐに現場に向かう。

 プレッシャーも大きい。墜落事故が起これば会社も依頼主も、そして業界全体も信用が失墜、開発にブレーキがかかる。

「業界の立ち上げから経験でき、誰もやってきていないことを自分の手で達成してきたという実感があります。今後も安全にリードしていけたら」

 可能性は広がるばかりだ。

 (文中敬称略)

 (ライター・安楽由紀子 写真部・東川哲也)

AERA 2017年3月20号