苦労があったからこそ、オランダ2部とはいえ、優勝の喜びはひとしおだったのだろう。優勝直後に街を挙げて行われたセレモニーやパレードについて話す姿は、いかにも楽しそうだ。

「選手時代からタイトルを獲る喜びを味わっていたから、指導者になっても、当然それを味わいたいと思って進んできた。だからこそ、すごく誇り」

 ただ、この先に進むには、さらなるハードルがある。それが監督を務めるうえで必要な指導者ライセンスだ。藤田は13年に日本サッカー協会公認のS級ライセンスを取得しているが、現状UEFA(欧州サッカー連盟)プロライセンスに書き換えができないというのだ。

「本来はどちらも同等に扱われるべきものだと思うが、前例がないためか、様々な見解があって定まっていない。こればかりは1人でどうにかできる問題ではないし、ずっと考えてきたけど答えなんて出ない」

 それでも、オランダに限らず欧州で監督として勝負したい気持ちは変わらない。

「せっかくこっちで3年半やってきて、監督をやってみたい気持ちは強い。正直、いろんな葛藤はあるけど、流れに逆らわず一生懸命やっていれば道は開けるはず。チャンスはいつ、どこから来るかわからないから」

 立場は変わっても、そのアグレッシブさは、現役時代に豊富な運動量と巧みな技術でMFながらゴールを量産したプレースタイルを彷彿とさせる。

 来季、VVVフェンロに残るかどうかは未定だが、「サッカーで見られる世界を今後もどんどん見ていきたい」。

 将来は“日の丸”を付けたチームの監督をできたら、それほどうれしいことはないとも言う。指導者・藤田俊哉の冒険は、まだ始まったばかりである。(スポーツライター・栗原正夫)

AERA 2017年6月5日