同事務所では、AIツールの導入で、より多くの案件を扱えるようになり、売り上げは、同規模の町弁の3倍になった。生産性は飛躍的に伸びたというわけだ。

 高橋弁護士は現在、IT企業と組み、新たなチャットボットを開発中。今後はこれまでパラリーガルと呼ばれる法律補助職などが人海戦術で行ってきた証拠収集や判例調査なども、AIが担うことになるという。

 AI脅威論が騒がれる発端となったのは野村総合研究所が英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授らと行った共同研究。プロジェクトに関わった野村総研の上田恵陶奈上級コンサルタントは言う。

「脅威ばかりが注目されてしまいましたが、そもそも人がAIと競争する必要はないのです」

 上田さんによれば「49%の仕事がAIで代替可能」というのは「技術的に」であって、現実的にはある職業が全て自動化されることは考えにくいという。

「日本は労働人口が急激に減少するので、自動化・省力化できる部分はAIに任せ、人は人でなければできない仕事にフォーカスし、新しい仕事を生み出していくことになる」

●「産業革命に次ぐ転機」

 AIと競争するのではなく、AIを活用しながら協働していく、というのが未来のビジネスパーソンの姿だとすれば、いまの子どもたちもそれに見合ったスキルを身につける必要がある。しかし、現在の学校システムは、産業革命の時代に、マニュアルが読めて、決められたことを実行できる人材を育てる目的で作られたもの──。

 そう指摘するのは東京大学大学院情報学環で学習環境デザインを研究する山内祐平教授だ。

「グローバル化が激しくなった90年代から、これまでの人材育成じゃダメだというので、21世紀型スキルが取り沙汰されるようになり、大学入試改革もその流れの中で生まれたのですが、ここ1~2年のAIの進化のインパクトはやはり大きい。教育も産業革命時に次ぐくらい、劇的に変わらなければいけないでしょう」

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