小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 北海道奥尻町の副町長の再任が、町議の反対多数で不同意に。その理由は「副町長の妻が町職員だから」……。

 高給取りの共働きに対する町民の批判があるという町議会の声を受けて、町長は副町長の妻に暗に辞職を促しました。妻は退職願を提出し、副町長の再任は全会一致で同意されました。これで町民の雇用の機会が一つ増えたと評価する声も。

 では、夫の再任のために辞職を余儀なくされた彼女の雇用は奪われてもいいのでしょうか。

 なぜ町議会は、副町長の実績や仕事ぶりへの評価ではなく、妻が町職員だからという理由で不同意を示したのでしょう。それは町の厳しい雇用情勢を改善する方法として正しいのでしょうか。

 公務員、しかも副町長という特別職ならば夫一人で家計を支えることができるはずだ。暮らしに困るわけでもないのに妻が高給取りの公務員の仕事をしているのはおかしい。副町長は、妻が手にしている特権を町民に譲るべきだ……そんな理屈で、一人の女性の働く権利がないがしろにされたのだとしたら。

 妻は夫の付属物ではありません。妻の仕事は夫の仕事の一部ではなく、夫婦はそれぞれ独立した個人です。

 同じようなことは他にもあります。知人が勤める会社では、同部署内で結婚したら、妻が異動するのが暗黙の了解、と聞きました。夫婦が同じ部署にいると、周囲に気を使わせるからと。ここでもやはり「妻が夫の事情に合わせるべき」という理由で女性が異動を余儀なくされています。

 男性の仕事は「人生の最優先事項」で女性の仕事は「家計の補助か自分探し」。夫が主で妻が従。いまだにそんな価値観と出会うことは少なくありません。重んじるべきは男性、譲るべきは女性と。

 誰もが働かないと生きていけない時代に、女性を男性のおまけ扱いするのはいい加減やめてほしいものです。

AERA 2017年5月29日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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