首相官邸での閣議前、閣僚応接室で閣僚が待ち、首相が到着すると敬意を表して起立する。その後、閣議室に移動する (c)朝日新聞社
首相官邸での閣議前、閣僚応接室で閣僚が待ち、首相が到着すると敬意を表して起立する。その後、閣議室に移動する (c)朝日新聞社
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 最近よく耳にする「閣議決定」という言葉。本来は政府の基本方針を定める重要な決定なのだが、安倍政権ではその閣議決定さえ乱暴になっている。

 ここ1年の間に国会議員からの質問主意書に対して、安倍内閣が行った政府答弁書の「閣議決定」だ。どこか違和感を抱かないだろうか。

 一連の森友学園問題の真相解明は急務だが、「安倍昭恵夫人は私人である」という政府の“屁理屈”をわざわざ閣議決定する意味は何か。戦前の軍国主義教育に用いられた「教育勅語(ちょくご)」の教材使用について、いち内閣が容認方針を軽々に閣議決定してしまっていいのだろうか。さまざまな意味で、安倍内閣の閣議決定には首をかしげざるを得ないのだ。

 そもそも閣議決定とは、行政権を担う内閣の基本方針、統一見解のことで、内閣の意思決定機関である閣議で決められる。意思決定は、閣僚の全員一致が原則。定例閣議は毎週2回行われ、法案、条約、政府答弁書、人事など多岐にわたる事案が閣議決定されている。内閣法第6条には「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する」とあり、各行政機関は閣議決定された政府方針に拘束される。

●憲法も国会も軽視

 安倍内閣で、閣議決定が大きな注目を集めたのは、2014年7月1日。従来の憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、安保関連法の法整備に突き進んでいった。だが、戦後一貫して歴代内閣が堅持してきた「憲法9条」の解釈を安倍内閣の判断で変更したこの閣議決定は、「立憲主義」の否定につながるなどと批判を浴びた。

 上智大学国際教養学部の中野晃一教授(政治学)は、この閣議決定を「非立憲的な国会軽視の典型的事例」と指摘する。

「憲法は『内閣は国会に連帯して責任を負う』と定めている。当時は、まずは正攻法で憲法改正をしてから法整備を進めるべきだという国会議論があったり、自民党内からも石破茂氏のように安全保障基本法のような法律を立法することが先決だという意見が出たりしていた。それにもかかわらず、安倍政権は国会や党内議論を深めないまま、閣議決定で解釈改憲を行うという最も安易な方法を選択した。これ以降、閣議決定での憲法軽視、国会軽視に歯止めがかからないようになった」

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