「パン屋を和菓子屋に」だけじゃない トンデモ道徳教育 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「パン屋を和菓子屋に」だけじゃない トンデモ道徳教育

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2012年、日本教育再生機構の集会で安倍首相は「教育基本法改正の一丁目一番地は道徳教育」と語り、翌年の教育再生実行会議で教科化が提案された(撮影/写真部・小山幸佑)

2012年、日本教育再生機構の集会で安倍首相は「教育基本法改正の一丁目一番地は道徳教育」と語り、翌年の教育再生実行会議で教科化が提案された(撮影/写真部・小山幸佑)

「安倍首相ガンバレ」を叫ぶ子どもたち、教育勅語を朗唱させる幼稚園……。森友学園問題に端を発して「右翼」という人たちが、にわかにクローズアップされている。AERA 2017年5月1-8日号では「右傾化する日本」を大特集。「右翼」って何?「保守」とどう違う? 素朴な疑問に答える。

*  *  *
「そっちへのびてはだめですよ」

 畑の外に向かってつるをのばすかぼちゃに、みつばちが話しかける。しかしかぼちゃは意に介さない──。

 2018年度から小学校の道徳が教科化される。1年生の教科書8社すべてに登場するのが、この「かぼちゃのつる」という題材だ。物語をしめくくるのは、道路にまではみ出したつるを車がひき、「いたいよう」と涙をこぼすかぼちゃのシーン。わがままをしないで生活する大切さを学ぶのが狙いだという。子どもと教科書全国ネット21・事務局長の俵義文さんは警鐘を鳴らす。

「極めて非科学的な題材を使い、画一的な価値観を押しつけています。国語や算数などと違い道徳には体系的な学問がないため、国が定めた“徳目”にのみ基づく恣意的な教科書づくりや検定が行われているのです」

 指導要領には、パン屋を和菓子屋に修正したことで世間を騒がせた「国や郷土を愛する態度」や「家族愛、家庭生活の充実」「節度、節制」などが並ぶ一方、「人権」に関する項目はない。

「戦前戦中に子どもたちを軍国少年少女に育て上げた『修身』に通じる内容です」(俵さん)

●教育勅語も使われる?

 さらに、道徳教育に教育勅語が用いられる可能性もある。松野博一文部科学相はこれを「否定も肯定もしない」と説明した。

「皇室国家」のためにその身をつくせとすることが教育勅語の本質だが、稲田朋美防衛相をはじめ「父母に孝に」「夫婦相和し」など現代にも通じるような徳目のみを抜き出して肯定する向きも多い。しかし、「当時の親子・夫婦は明治憲法下の家父長制的な関係です。これらを今風に言えば、父親に虐待されても夫からDVを受けても耐えて従い仲良くしなさいということですよ」と俵さんはクギをさす。

 4月18日、政府は教育勅語を教材に活用するかは都道府県などに委ねると答弁書を決定した。

 熊本県で家庭教育支援条例を制定するために奔走した自民党の溝口幸治県議(日本会議熊本地方議員連盟・事務局長)は、毎月、青井阿蘇神社の朝詣会に自身の子どもたちを連れていき、教育勅語の朗読を行わせている。暗唱もできるそうだ。最も問題視される徳目「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」も彼によると「自己犠牲の精神です。熊本地震のとき、不眠不休で復興作業にあたる行政職員や自衛隊員、ボランティアの方々の姿に重なります」という美談になる。

 これ以上の詭弁を許さないためにも、今後は地方議会や教育委員会の動きにも注意したい。(編集部・竹下郁子)

AERA 2017年5月1-8日合併号


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