秀島史香(ひでしま・ふみか)/1975年生まれ。ラジオDJ、ナレーター。FM局のDJ、テレビCMのナレーション、絵本の読み聞かせ、通訳や字幕翻訳、コラムや音楽レビューといった執筆活動などで活躍中(撮影/写真部・加藤夏子)
秀島史香(ひでしま・ふみか)/1975年生まれ。ラジオDJ、ナレーター。FM局のDJ、テレビCMのナレーション、絵本の読み聞かせ、通訳や字幕翻訳、コラムや音楽レビューといった執筆活動などで活躍中(撮影/写真部・加藤夏子)

 人気ラジオDJの秀島史香さんは、もともと人見知りで、人に会うのが不安だったのだという。今では下ネタにも平然と切り返せるようになった秀島さんの転機とは? 秀島さんにお話を伺った。

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 秀島史香という人の声には何か場を和ませる成分が入っていると常々思っていたのだが、それが単なる素材の良さだけではないということを、この本、『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』(秀島史香著)を読むと痛感する。ラジオのDJとして20年、仕事の中で、生活の場で、日々気づいたことを細かくメモし、真剣に向き合い、その結果としてあの声があったのだ。本には「いい空気を一瞬でつくる」ための法則が彼女の体験を元に書かれている。

「そうありたい自分との約束というつもりで書きました。私がその通りに100%できているかと言ったらまったくそうではないです(笑)。20年という区切りの年に、さらに頑張っていこうという、遅れてきた所信表明みたいなことなんです」

 昨年の春から1年間、夫の仕事の都合でベルギーで暮らした。この本を書こうと思ったのにはベルギーという土地柄も影響したとのこと。

「皆さん心に余裕があるというか、思いもしないコミュニケーションの取り方をされるんです。路面電車を待っている時におばあさんがあちらから歩いてきて、ふと目が合ってニコッとしてくれる、それだけで一日気分がいい。お互い言葉はわからないのに、なんで人に会うことでこんなに心地よくしてくれるんだろうって。何かそれを言葉にしたいなっていうのが大きなきっかけでした」

 子どもの頃から本の虫だったという。自分の本を出すことになって「あの頃の自分に教えてあげたい気分」なのだとか。

「言葉が形に残るという憧れが小さな頃からあったんです。線が引けることってすごいな、ページを折ることができるっていいなって。ラジオの仕事は良くも悪くも形に残らない。手に触れることができないんです。その面白みも怖さもあるんですけれど、いつか私の思いが印刷されて、読んでいただいた誰かの何かのきっかけになればいいなというほのかな憧れがありました」

 転機だと語るJ-WAVEの「GROOVE LINE」(現在は「GROOVE LINE Z」)に先日久しぶりに出演し、ナビゲーターのピストン西沢と軽快なトークを披露した。本には、あの絶妙な空気を生み出すまでの、そして、下ネタに平然と切り返せるようになるまでの努力も書かれている。あの声に癒やされたことのある人はぜひ読んでみてほしい。彼女の試行錯誤はきっと様々な人がコミュニケーションの場で生かせるはずだから。(ライター・濱野奈美子)

AERA 2017年4月17日号