●「上にモノ言えぬ企業風土」(府中事業所 元社員/松野哲二さん(68)1973~2009年在籍)

 土光敏夫は東芝再建の神様ともてはやされた経営者だが、東芝社員に放った「語録」の中には、次の二つもある。

「会社で働くなら知恵を出せ。知恵のない者は汗を出せ。汗も出ない者は静かに去っていけ」「東芝社員は金太郎飴になれ。どこを切っても社員は同じ顔でいろ」

 東芝危機の原因にトップに物が言えない社内風土が指摘されているが、すでに土光時代から上意下達の言いなり体質だった。秘密スパイ組織のような「扇会」の存在も忘れてはならない。扇会は1974年に東芝労使で作られた。私たちも反原発のビラをまいたことで監視対象になり、いじめと職場八分を日常的に受けた。現在の役員クラスは私と同じ、そうした時代を生きている。自分の考えを言わず、上に従うように教育されている。今の東芝の凋落は、そうした企業風土がつくったものに他ならない。

●「優秀な人材が集まった」(慶應義塾大学/足立修一教授(59)1986~90年在籍 研究開発)

 当時、日立と東芝が電機メーカーのトップで、東芝は特に慶應義塾大学の学生に人気でした。大手はバブルが弾けるまで上昇気流に乗っていた。私が入った総合研究所の雰囲気もとてもよく、純粋な研究ができた。制御技術部門で人工衛星に携わっていたが、研究費は潤沢で足りないことはなかった。優秀な人が多く、同じ部門の30人のうち、10人ほど大学教授になったと思います。

●「誰かが責任を取るべきだ」(現役社員/男性50)

 有休を使って3月30日の臨時株主総会に参加した。原子力事業の責任者だった志賀(重範元会長)さんから説明を聞きたかったけど、体調不良で休みと説明があった。本当なのか。ほかの株主も「診断書を出せ」「またウソをつくのか」と怒っていた。

●「メーカーの原点に」(関連会社の現役社員/男性50代)

 家電部門はカンパニーから子会社へ、白物家電は美的集団に売却され、関係者はつらい思いをしたと聞いています。テレビ部門は今年有機ELテレビも開発し、昨年度下期は黒字化を達成したようです。東芝は本来モノづくりの会社だったはず。経営陣はM&Aばかりに注力せず、メーカーの原点に立ち返ってほしい。(関連会社の現役社員/男性 50代)

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