ケン・ローチ監督 2度目のカンヌ・パルムドール受賞作「あのシーンは実話です」 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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ケン・ローチ監督 2度目のカンヌ・パルムドール受賞作「あのシーンは実話です」

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坂口さゆりAERA

「わたしは、ダニエル・ブレイク」は全国で順次公開中。第69回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた。監督にとっては、「麦の穂をゆらす風」(2006年)に続く2度目の受賞 (C)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cine´ma and The British Film Institute 2016

「わたしは、ダニエル・ブレイク」は全国で順次公開中。第69回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた。監督にとっては、「麦の穂をゆらす風」(2006年)に続く2度目の受賞 
(C)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve, 
British Broadcasting Corporation, France 2 Cine´ma and The British Film Institute 2016

 ケン・ローチ監督が新作を発表。引退宣言したはずなのに、なぜ。助けを必要としている人が、他の誰かを助ける。そんなストーリーを「いま」描かなければならなかった理由を、監督に聞いた。

*  *  *
 これほど人をイラつかせるヴィヴァルディの「春」を聴いたことがない。映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」で「お役所仕事」を象徴する電話の保留音がそれだ。

 強大な権力に立ち向かう人々に寄り添い、彼らに代わって声を上げる。名匠ケン・ローチ監督(80)はいつも、そんな目線で英国の労働者階級の人々を描いてきた。最新作では、心臓の病で働けなくなった大工のダニエルと、彼が手を差し伸べるシングルマザー・ケイティを通じて、人間の尊厳を問う。

●1時間48分の保留音

 前作「ジミー、野を駆ける伝説」で引退を表明していたローチ監督が、それを撤回してまでメガホンを取ったのはなぜか。

「人を人とも思わない。人を辱めるようなことも、人を罰することも平気でする。まじめに働く人たちの人生が混乱したり、援助を受ける人たちが食べられなくなったりすることを武器のように使う、政府の意識的な冷酷さに突き動かされました」

 実直に働き税金を納めてきたダニエルは59歳。ドクターストップで働けなくなり、国の援助を受けようとする。だが政府から業務を委託された“専門家”の不条理な質問の結果、失業手当が打ち切りに。不服申し立てのために役所に電話をするが、保留音の「春」を1時間48分も聴かされた揚げ句、認定者からの電話を待てと突き放される。

 職安で申請書をもらおうにもすべてがオンライン。IT弱者のダニエルは「おれは大工だ。家なら建てる。でもパソコンは知らない」と叫ぶが、「デジタル化ですから」のひと言でおしまいだ。あきれた彼が「電話番号は?」と問えば「サイトにあります」。


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