ひろさちや(ひろ・さちや、80)/宗教評論家。1936年生まれ。東京大学文学部印度哲学科(当時)卒。著書に『気にしない、気にしない』(PHP文庫)など(撮影/今村拓馬)
ひろさちや(ひろ・さちや、80)/宗教評論家。1936年生まれ。東京大学文学部印度哲学科(当時)卒。著書に『気にしない、気にしない』(PHP文庫)など(撮影/今村拓馬)

 2016年の新語・流行語大賞は「神ってる」。“聖地巡礼”“パワースポット”がにぎわいを見せ、神様が身近にあふれる。3・11から6年、一人ひとりがそれぞれの形で宗教と向き合う時代。日本の宗教にいま、何が起きているのか。AERA 1月16日号では「宗教と日本人」を大特集。現代の宗教最前線を、宗教評論家のひろさちやさんに聞いた。

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 国家神道と民衆神道。神道にはこの二つがあり、まず明確に分ける必要があります。

 前者は、宗教ではなく一つのイデオロギー。天皇を「現人神(あらひとがみ)」とし、民衆を支配するためのイデオロギーです。律令制が成立した7世紀ごろ、当時の支配階級が民衆を統治するための道具としてつくったのです。戦前、国家神道は聖戦思想の根拠となりました。そのため、GHQは危険なイデオロギーとして国家神道を廃止したのです。

 一方、自然の恵みを受け、生かされているという自然崇拝の中で生まれたのが民衆神道です。この自然の恵みを表現したのが「神」です。つまり、私たちは神様に囲まれ、一緒に生きているのです。「空気が読めない(KY)」という言葉がありますが、私はあの「空気」が神様だと思っています。民衆神道の起源は、狩猟採集を行っていた縄文時代にあると思います。

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