●市民町民がエキストラ

 関ジャニ∞などのジャニーズ事務所所属のタレントや、綾野剛などイケメン主演作品のロケが続いたことから、「イケメンが集まるロケ×グルメのまち」と銘打ち、16年は綾瀬市商工会がロケ地やグルメスポットをめぐる「綾瀬おさんぽマップ」も発行。1万部を配布する人気となっている。

 ロケ地としての知名度アップとともにロケ誘致に協力してくれる市民も増えていった。いまでは市民エキストラ約300人を抱える人気ロケ地。映画やドラマの制作者に知られる存在となっている。

 官民が一丸となって作品をもり立て、興行成績アップに一役買っているフィルムコミッションも少なくない。たとえば静岡県河津町の「伊豆河津ロケーションサービス」がそのひとつ。河津町は、古くは川端康成の小説『伊豆の踊子』の舞台として知られ、田中絹代や山口百恵の主演で過去に何度もあった映画化の際には必ずロケ地に採用されてきた。

「ところが、1974年の山口百恵主演の『伊豆の踊子』以降は映画化はなく、ほかの作品の小さなロケが入るだけでした」

 河津町商工会の副会長、長谷川延之さんはそう話す。そんななか13年、制作費わずか数百万円という低予算のショートムービーのロケに、町民のエキストラ200人を募って協力。これをきっかけに、ロケ誘致を本格化させるようになった。

●コツコツが成功の秘訣

 ロケの交通整理を町民が買って出たり、イノシシ鍋をロケ隊にふるまったりして、労働奉仕でロケに協力。なかでも14年公開の「大人ドロップ」では、人口7500人の町に、100万人もの花見客がやってくる「河津桜まつり」を活用して、作品をPRした。伊豆急行も公開記念のギャラリートレインを運行するなど、町をあげて映画のプロモーションに手を貸した。

「桜まつりも、年月をかけてコツコツ作り上げてきた観光資源。ロケツーリズムも長く、コツコツ取り組むのが成功の秘訣(ひけつ)ですね」(長谷川さん)

 見る側には新しい映画の楽しみ方を提案し、作る側にはロケの利便性や手作りのプロモーションを提供。そしてロケ地となる自治体には、知名度アップと住人の地元愛アップをもたらすロケツーリズム。ウィンウィンなんて眉唾と思っていたけど、この三者のウィンウィンウィンなら夢じゃない。

AERA 2017年1月2-9日合併号