家賃補助で女子比率は上がるのか。「そもそも女子にとって東大は魅力がないのでは」という声もある(撮影/写真部・大野洋介)
家賃補助で女子比率は上がるのか。「そもそも女子にとって東大は魅力がないのでは」という声もある(撮影/写真部・大野洋介)
大学学部の入学者数に占める女性の割合(AERA 2016年12月19日号より)
大学学部の入学者数に占める女性の割合(AERA 2016年12月19日号より)

 大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集。

 毎年、全国から数多くの入学者を集める東京大学では、女子学生限定の新たな制度がスタートする。なぜ、女子学生限定なのか、その狙いとはなんなのか、東京大学が行う注目の取り組みについて紹介する。

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「なぜ女子学生だけが好条件で住めるのか」

「該当する物件はもともと学生に人気が高い。女子学生向けに確保されると、男子学生が入居しづらくなるのでは」

 男子学生からは、そんな不満の声も上がる。

 東京大学は2017年4月から、1~2年生が通う東京都目黒区の駒場キャンパス付近で、セキュリティーが十分で保護者も宿泊できるといった条件を満たす100室を借り上げる。ここには、東大に入学する女子で通学に90分以上かかる人だけが入居でき、月額3万円の家賃補助もするという。

●20年までに女子3割

 冒頭のような声も少なくないが、東大の女子学生は約4割が自宅外から通学しているのに、10年に取り壊されて以降、東大には女子寮がない。いま、女子が安価に入居できるのは、三鷹市にある男女共同の寮のみだ。

「新たな女子寮の建設を検討しているが、建設コストの高騰もあり、寮の整備が遅れているため、即効性のある今回の措置となった」(東大広報担当)

 背景には、女子学生比率を引き上げたいという狙いがある。

 東大は、20年までに女子学生比率を全体の3割まで引き上げることを目標にしているが、16年現在で全体の19%と、2割に満たない。

 タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング」の上位に名を連ねる海外トップ大学はいずれも、女子学生比率が高い。米イェール大学が49%、スタンフォード大学が42%、英ケンブリッジ大学が45%と、東大を大きく引き離している。国内の難関大学でも、大阪大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学はいずれも3割を超えている。

 学部から大学院に進学した男子学生(23)は、東大はとにかく女子学生が少ないと嘆く。

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