「我々が選挙に勝利しなかったら、こんな投資をしなかっただろう、とマサは言ったよ!」

 しかも、孫氏が報道陣にちらつかせた資料には、台湾の電子機器の受託生産大手、フォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海[ホンハイ]精密工業などのグループ)のロゴがあり、市場関係者が興奮した。ソフトバンクが提案した投資とは別に「70億ドル、プラス5万人」という謎の数字もあったからだ。鴻海は早速、米国への新規投資について、次のコメントを発表した。

「我々のリーダーと、関係の米政府当局者による直接の対話が完結した後、計画の詳細を発表する」

●アメリカ第一で徹底

 鴻海はアップルの最大のサプライヤーで、経営難のシャープを買収した。アップルが世界最大の電子機器メーカーでありながら、米国内に一切生産部門を持たないのは有名だ。「アメリカ第一」を掲げるトランプ氏の標的でもある。鴻海が、米国内の事業を新たに拡大するとなれば、トランプ氏の勝利であり、アップルには大きなプレッシャーとなる。

 トランプ氏の長年の友人でアドバイザーでもある実業家ジョージ・ロンバルディ氏は、記者とのインタビューでこう言った。

「トランプ氏が、アップルとではなく、フォックスコンと話をしたのであれば、非常に賢いアプローチだ」
トップセールスが殺到

 孫氏の45分間のトランプ詣では、世界の経営者が、トランプ次期大統領と「トップセールス」会談ができると信じるに足るものだった。そして、アナリストやワシントンDCの要人が警戒するトランプ氏の「利益相反」問題をも浮き彫りにした。

 いまや、新たな観光名所となったトランプ・タワー。そこには、彼の帝国の中心であるトランプ・オーガニゼーションの本社がある。不動産、グッズ、テレビ事業などを世界で展開しているが、トランプ氏は、経営・資産管理を長男ドナルド・ジュニア、次男エリック、長女イヴァンカの3人に移行し、自らは身を引くと表明、具体案は12月15日に発表する。

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