「過去の気候と食品売り上げのデータを解析したところ、季節性の高い食品の需要と気候は連動性が高いことがわかりました」

●“豆腐指数”で予測

 たとえば豆腐の場合、小売店から製造者への注文は販売の前日だが、生産は2日前に始まるので受注生産ができない。商品が不足しないよう多めに作っておき、注文を下回った分は廃棄する。そこへ、同協会が天気予報に基づいて需要を予測する「豆腐指数」を算出し、提供した。

「需要予測はその日の気温だけでなく前日との気温差、店舗の立地なども影響します。結果にズレが生じたらそれも加味しながら精度を上げました」(吉開氏)

 比較的賞味期限の長いつゆの場合は、長期予報でシーズンを通した生産量や季節の変わり目で売り切る「終売計画」にも一役買ったという。ひと夏の実験の結果、寄せ豆腐で約30%、冷やし中華つゆで約20%のロス削減に成功した。

「今は店舗での売れ残りや配送の無駄を減らすため、製造、物流、小売りの3者と連携した実験に取り組んでいます。ツイッターの位置情報つきツイートを使った体感的な暑さ寒さのデータも活用しています」(同)

 食品ロスを有効活用するリサイクルやリユースも行われている。セブン-イレブン・ジャパンでは店舗で発生した販売期限切れ商品を飼料・堆肥などにリサイクルしているほか、賞味期限間近の商品を事業者から引き取って福祉施設などに配布する「フードバンク」も各地に誕生し、活動の幅を広げている。

 とはいえ、食品ロスの半分は、家庭から出ている。忘れられたまま賞味期限を迎えたり、食卓の食べ残しが膨大な量のゴミを形成しているのだ。

 私たちにできることは何か。井出氏はこうアドバイスする。

「一人ひとりの購買行動が変われば食品ロスは減らせます。常に冷蔵庫を一杯にすることが本当に必要か考え直してほしい」

(ライター・森田悦子)

AERA 2016年12月5日号