私の知事選では、自民党都連に貼ってもらおうと送った選挙ポスターが、そっくりそのまま送り返されてきた。人手が圧倒的に足りなくなり、その支援要請も兼ねて方々回った団体の一つが徳洲会。結局ポスターは連合が貼ってくれましたが、自民党都連はドンの意向のままに動いているんだと痛感させられましたね。

 ここまで権力が集中するのは、国政と都政の構造の違いにあります。国政であれば各官庁ごとに勉強する自民党の部会があり、委員会がある。族議員は批判の対象にもなるけれど、相当な勉強を積んでプロセスを経た専門家でなければ大臣にもなれないので、一定の緊張関係が成り立つ。都議会にはそうした部会がないので、強権的なドンの一元支配が可能になり、人事も思い通りに動かせるのです。

 小池氏が知事選に勝ったことで、闇に隠れていた悪玉たちは光が当たって動けなくなり、巻き返しを狙って雌伏している。小池新党を立ち上げるかどうかは別にして、次の都議選で刺客を放ってでも都政の場から退場させることが肝心です。(談)

(作家・元東京都知事 猪瀬直樹)

AERA 2016年11月14日号