「プログラミング」というとコードを書く「実装」に重点が置かれ、「設計」への着目が弱いように感じますが、「設計」が非常に重要なんです。

 この「モデルベース思考」はプログラマーではない人にも有効だと感じています。

 私の場合、モデルベース思考を身につけたことで、プレゼンの資料を作る時間が短くなりました。それまでは、この情報も、あの情報も伝えたい、と情報を積み上げる形で資料を作っていて、情報の取捨選択に時間がかかっていました。それが、プレゼンの目的を考えるところから始めて、これを伝えるために必要な資料は、と逆算で考えられるようになりました。つまり、いきなり資料作りという「実装」から入るのではなく、どのような構成をとればよいかという「設計」から始められるようになり、作業が効率化されたということです。

●抽象化で本質がわかる

 もちろん、プレゼンの資料作りだけではありません。世の中のあらゆることはモデル化できるため、幅広くこの思考法を利用できます。プリンタのビジネスモデルを考えてみましょう。

  [プリンタ購入]─促す─[インク購入]

 このモデルを抽象化して、ビジネスモデルの本質を見極めてみましょう。

  [初期投資]─促す─[運用費の支出]

 つまり、プリンタのビジネスは本体の購入という「初期投資」ではなく、インクの購入という「運用費の支出」でもうけていることがわかります。これをシステム販売に応用すると、システムの導入でもうけるのではなく、月々の保守費用でもうけようなどと新たな発想を得ることができます。

 企業での会議は、よい会議のモデルを使うことで効率化できます。また、ビジネスモデルの例のようにモデルを活用して議論することで、無駄に長かった会議から有意義なアイデアが生まれるのではないでしょうか。(編集部・高橋有紀)

AERA 2016年10月31日号