まず、コンビニなどで一般的なラガービールを買ってきたら、家に着いてすぐ開けるのはNG。振動で炭酸が暴れている状態で開ければ、一気に炭酸が抜けてしまうからだ。できれば1日冷蔵庫で保管し、炭酸が再び液体に溶け込むのを待つ。そして、静かに開けたら必ずグラスに注ごう。

「せっかく入っている炭酸はなるべく抜かないほうがいい。味や風味のまとめ役なので」

 グラスは冷やさず常温で、においやほこりを取るため、必ず一度すすぐこと。グラスの内側はつるつるに見えても、実は細かい凹凸がある。それを水でなめらかにしておく。傾け、側面にはわせるように静かに注いで水流の渦を作る。缶の中身をそのままそっとグラスに移し替えるイメージで。うまく注げると、炭酸がシャンパンのように琥珀色の液体を駆け上がっていく状態になり、1時間ほど経っても炭酸は抜けにくい。

 クラフトビールの黒ビールやIPAなどは、温度によって苦みやえぐみ、酸味の差が出やすいため注意が必要。冷蔵庫から出したら5~10分ほど置いて温度を上げると味わいがしっかり感じられる。沈殿した酵母が混ざらないよう静かに注ぐ。

「ビールのスタイルに合った最適な注ぎ方をすることが大切。注ぎ方で味は確実に変わります」

(ライター・まつざきみわこ)

AERA 2016年10月24日号