●恋愛はアナーキー

松本:オナニーは“自分ごと”だけど、セックスは相手がいて初めて成り立つこと。だから、互いにパートナーのことを思いやる気持ちが大事だと思っているんです。「テンガがあれば、女性はいらない」と言ってくれる人もいるんですけど(笑)、その意味でテンガはセックスの代替品にはならない。

湯山:セックスに興味がない若い人が急激に増えてますよね。

松本:僕が見る限り、若い人には深いコミュニケーションを嫌がる傾向がある。カップルになるところまで踏み込みたがらない。これって、大きな問題をはらんでいると思うんです。なぜなら、僕の人格の半分ぐらいは、勇気を出して「好きだ」と言ってみたり、フラれたり、浮気をされたりっていう、女性との関係からできたもの。だから、多少なりとも女性の気持ちを考えることができる。でも、今の若い男性は、そういう経験が乏しい人が増えていますよね。

湯山:そういう経験は努力に見合ったお得感がないんですよ。そんな暇があったら勉強して、東大を頂点とした学歴身分制度、もしくは専門分野に居場所を見つけることが大切なわけですから。まだ昔は「三流大学だけど、チンコは一流」みたいな男の矜持もありましたがね(笑)。まあ、社会の締め付けが厳しくなった。ベッキー問題は、その典型。本来、恋愛ってアナーキーなもの。なのに、あんなふうにみんなして袋叩きにしたら、誰も恋愛したがりませんよ。

松本:正義感を振りかざして叩く風潮は強くなっていますよね。

湯山:理解できないものを許さないんです。それが、恋愛を遠ざけている。学歴は数値化できるけど、“モテ”はわかりにくい。火野正平がなぜ、女性と浮き名を流してきたかなんて数値化できない。そんなわけのわからないものに振り回されたくないから、恋愛は煩わしいとなる。

松本:テンガは42カ国で販売されているので、海外の人と話をする機会も多いんです。その実感で言うと、アジアは中国や韓国を中心に、性に対して抑制的。一方で、アメリカは開放的です。ハリウッド女優などは平気で「私は性欲に対してこう向き合ってます」とか言えてしまう。性欲を人の本質として認めているんです。そんな中で、日本は、どちらかというと開放的。それに人に対する思いやりが強い。中国の女性に聞くと「中国の男は自分本位で前戯もしない」と話す人が多いんですけど、日本の男性は頑張る(笑)。ただ、コミュニケーションが苦手で、「愛してる」の一言が言えない。

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