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過酷電通に奪われた命、女性新入社員が過労自殺するまで

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by 熊澤志保,山口亮子,福井洋平 (更新 )

三田労基署の労災認定を受け記者会見に臨んだ母の幸美さん。自殺した日の朝に「今までありがとう」とのメールがあった (c)朝日新聞社

三田労基署の労災認定を受け記者会見に臨んだ母の幸美さん。自殺した日の朝に「今までありがとう」とのメールがあった (c)朝日新聞社

電通は1991年にも入社2年目の社員が自殺。2000年に最高裁で「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする義務がある」と責任を認定された。今回の件で東京労働局は電通の本社などを立ち入り調査した (c)朝日新聞社

電通は1991年にも入社2年目の社員が自殺。2000年に最高裁で「会社は過労で社員が心身の健康を損なわないようにする義務がある」と責任を認定された。今回の件で東京労働局は電通の本社などを立ち入り調査した (c)朝日新聞社

 ある若手の電通社員は、高橋さんが配属された部署は「若手社員のなかでも評判の『行きたくない部署』だった」と言う。

「関連会社からの出向社員が多く、本社の若手社員が『本社なのに、その学歴なのに、こんなこともできないのか』と叱責(しっせき)されたり、意図的に間違えた指示を出されたりと、パワハラが常態化していたと聞いています」

 電通はネット広告分野については今年7月に発足した「電通デジタル」などの子会社に業務を任せることも多く、電通本社に子会社から大量の出向者が来ていたと関係者は証言する。

「そんなにつらい職場なら、やめればよかった」というのはたやすい。だが、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授で、職場のメンタルヘルスに詳しい松崎一葉医師はこう言う。

「過労による自殺のほとんどは睡眠不足の状態で起こっている。論理的に見えても脳は疲れ、判断能力が低下して、小さなきっかけでもう死ぬしかないと思ってしまうのです」

●他人事に思えない事件

 高橋さんはうつ病も発症していたとみられる。松崎さんは「推測だが、真面目で根性がある彼女は、うつにかかるリスクが高かったのでは」と分析する。

「嫌々過重労働をするのではなく、いい仕事をするために、進んで仕事をする。他者を気遣い、手助けは申し出るが、自分からは援助を求めない」

 真面目であるために、パワハラもまともに受けとめやすい。

「上司のむちゃな要求も多くの人が受け流したり、10のうち8で諦めたりするのに、睡眠時間を削って最後までやってしまう」

 そんな高橋さんの事件はとても他人事ではない、という声は多い。本誌で今年4月、ヤフーと協力して行ったウェブアンケートでは、「仕事が理由で体調を崩したり、家庭が壊れたり、人生が狂ったりした経験がありますか」という質問に約2800人中、約2100人が「ある」と回答。長時間労働、休日出勤があると答えた人は約1200人に達した。

 SEの男性(37)は3年前、10年以上勤めた職場をやめた。2、3年に一度、同僚が「突然死」する環境が嫌になった。

「プロジェクトはいくつも並行して走り、トラブル対応もこなさなければならない。スキルのある人に仕事は集中し、月の残業は80時間超が普通で、100時間を超える月もありました」


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