
部屋着なんてリラックスできればOKでしょ。なんて思っていたら大間違い。最近は高度なセンスが必要です。家から1マイルは外出できる「ワンマイルウェア」。これがあれば、あなたもおしゃれ上級者です。
ピンポーン!
宅配便はいつも不意にやってくる。パート勤務の40代の女性は、仕事のない日は家でグダグダ。ノーメイクで、髪は起き抜け状態。服はパジャマのままでいる。半分夢見心地でいるところをいつも現実に引き戻すのは宅配便だ。
どうしようか。一瞬考える。あまりにもひどい状態のときは居留守を使うこともある。マンション1階に宅配ボックスがあるからだ。でもわざわざ下に取りにいくのも、それはそれでおっくうだ。ご近所さんの目もある。
宅配便がエントランスを通ったら、部屋の前に到着するまでには数分ある。手近にユルめのワンピースがあれば、パジャマを急いで脱いで頭からかぶってしまう。シャツ系のパジャマのときはズボンだけスカートに穿きかえることも。扉を半開きで手と顔だけ出して、そそくさと品物を受け取る。
「家着をどうにかしなくちゃと思うんですけどね。さすがにパジャマはやめないと……」
●大屋政子ちゃん状態
いまや家にいながらにして、スマホやパソコンのワンクリックで買い物ができる便利な時代になった。しかしその分、宅配便との接触機会は増え、新たな「家着問題」が生まれている。
家の中では趣味の世界に浸っていたい──。都内で暮らす主婦(49)が高校時代、夢中になって読んだのは雑誌オリーブ。ヘビロテしていた部屋着に、スピック&スパンで購入した紺のギンガムチェックのワンピースがあった。ひざ上丈で、袖がパフスリーブ。イギリスのプライマリースクールの女の子の制服に似ている。長い髪を三つ編みおさげにしようものなら完璧だ。しかし、夫にはこう釘を刺されていた。
「家で好きで着ている分には構わないけれど、外には出ないほうがいいよ。大屋政子ちゃん状態だから」
その服を着て外出することはなかったが、ある日、玄関の呼び鈴に応じてドアを開けた。扉の向こうに立っていたのは宅配便のスタッフ。その場の空気が凍った。