基礎杭の施工不良で全棟建て替えが決まった「パークシティLaLa横浜」=横浜市都筑区 (c)朝日新聞社
基礎杭の施工不良で全棟建て替えが決まった「パークシティLaLa横浜」=横浜市都筑区 (c)朝日新聞社
取材に応じる「ララ横浜」の建て替え修繕委員長(右)と管理組合理事(撮影/高井正彦)
取材に応じる「ララ横浜」の建て替え修繕委員長(右)と管理組合理事(撮影/高井正彦)

 杭の一部が支持層に届いておらずマンションが傾いたとされる問題で、管理組合は全棟建て替えを決議した。「5分の4以上の賛成」の裏には熾烈な駆け引きがあった。

 横浜市都筑区のパークシティLaLa横浜(以下、ララ横浜)の建て替え決議集会は、大詰めの集計にさしかかっていた。9月19日午前10時40分、壇上のホワイトボードに書かれた数字を見て、「おやっ?」と私は首をひねった。

「区分所有者総数635名─賛成633名」

 5分の4以上の賛成で全棟の建て替え決議は成立した。不可解なのは、そこではない。区分所有者数が大幅に減っていたのだ。従来の区分所有者数は705だった。つまり、短期間に事業主の三井不動産レジデンシャルは70以上もの住戸を買い取っている。全戸の1割超の議決権(票)を集めれば、賛成でも反対でも影響力を持てる。三井は何を狙っているのか。解せぬまま、管理組合の建て替え修繕委員長に「三井票」の動きを訊ねると、驚くべき答えが返ってきた。

「三井は72戸の票を持っていますが、最後の最後まで賛成か反対か言いませんでした。住民の多数派(建て替え派)を支持するよう再三説得したのですが、はっきりしない。ひと月ほど前、やっと『住民だけで5分の4以上』が賛成すれば賛成に回る、と口頭で伝えてきました」

 もしも「住民だけで5分の4」がクリアできなければ、三井側はどうするつもりだったのか?

「議決権の放棄です。まさか全棟建て替えを言いだしておいて反対するわけにはいきません。でも議決権の放棄は反対も同じ。何が何でも住民だけで9割以上の賛成が必要でした」

「議決権の放棄」と聞いて思わず耳を疑った。

●「5分の4」のハードル

 昨年9月、ララ横浜4棟のうち1棟の杭が地盤層に届いていないことが発覚すると、翌月、三井側は「全棟、全住戸の建て替えを基本的枠組みとする」と表明。建て替え後の新築価格(再調達価格)での住戸の買い取り、戸当たり300万円の慰謝料、仮住まいの家賃、引っ越し代などの補償も示す。「さすが三井」と讃えるメディアさえあった。しかし、内心では議決権放棄で建て替えを潰し、補修に切り替える方法を探っていたのかもしれない。建物の解体、建設に約300億円、仮住まい等の補償関連で約100億円。総額約400億円の費用負担は、三井といえども軽くはない。施工をした三井住友建設、杭を担当した旭化成建材などに責任割合に応じて負担を求めるにしても、すんなりとはいくまい。

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