2月1日、国内メガバンクがブロックチェーンを活用した「仮想通貨」の開発を進めていると、朝日新聞(夕刊)が報じた。三菱東京UFJ銀行の「MUFGコイン」だ。社内で送金実験を行い、専用アプリの試作品も完成している。交換比率は「1円=1MUFGコイン」。仮想通貨「SmartCoin」の設計に参加した経験もある慶應義塾大学SFC研究所上席所員の斉藤賢爾は、

「日本円建ての独自通貨を発行するというのは、これまでの銀行ならあり得ない発想だ」

 同行は8月には、ブロックチェーン技術を活用して小切手の発行・決済を電子化する実証実験をシンガポールで、日立製作所と共同で始めるとも発表した。

 メガバンクの実験は、地方銀行を刺激している。彼らの関心は地域通貨。あの日銀も、日本円のデジタル化を長期的視野に入れている、という見方もある。

 お金のイノベーション、フィンテックは世界に、どんな影響を及ぼすのだろうか。まだ具体的なイメージはわかないが、

「AI(人工知能)やロボティクス(ロボット工学)より、巨大になる」

 と斉藤は言い切る。

 確かに、AIやロボットをどれだけ必要とするかは、人によって違いがあるだろう。けれども、お金から自由な人はほとんどいない。社会を支えるインフラ中のインフラ=マネー。ここの根幹が変われば、インパクトは極大になり得る。

 さまざまな課題や、いろいろな妨害が起きるかもしれないが、仮想通貨とそれを取り巻く技術の進展が、停滞することはないだろう。この業界でいま、広がっているこんな言葉は、決して大げさではない。

「Adapt or die」(適合か死か)

(文中敬称略)

(編集部・岡本俊浩)

AERA 2016年10月10日号