ビットコイン&ブロックチェーン研究所を設立し、普及活動を行う。完全無給だ。のめり込むのは、ビットコインが社会を根底から変え得る可能性を持っていると思うからだ。

 ビットコインには米連邦準備制度理事会(FRB)や日本銀行に当たる「中央管理者」がいない。何を意味するかというと、国が保証する「お金」という体系の枠外に、価値の保存手段が創り出された、ということだ。

 円やドルといった現状の通貨には、国家の担保する「トラスト(信用)」が不可欠だが、ビットコインは「トラストレス」。情報工学が作り出した現物資産だ。上限が2100万枚と決められている。

「政府は、再分配という名のもとで、個人の意思を無視して財産に触手をのばしてきた。でも、そういう管理者がおらず、政府の管理下にないビットコインは、個人をよりエンパワーし得るお金だ」(大石)

 それは一方で、格差拡大につながるのでは? 記者の問いに、大石はこう反論する。

「ただのひがみ。ビル・ゲイツが何人いようと構わない。重要なのは、ボトムラインを上げられる可能性があること」

●貧困層にも金融の恩恵

 大石の論を説明すると、こうだ。世界の貧困層には、銀行口座を持てない「アンバンクト」と呼ばれる人が膨大にいるが、ビットコインを使えば口座の開設は不要。銀行の支店があるか、といった地理的な条件でサービス上の制限も生じない。間に入る人がいないので、助けを必要としている人にビットコインを直接届けられる。海外では、ネットワーク上の仮想国家として「ビットネーション」を建設しようという動きさえあるというのだ。

 取引量も急拡大している。

 日本最大のビットコイン取引所「bitFlyer」(東京都港区)を訪れた。トレーディングルーム的な見た目かと思えば、オフィスはITベンチャーと変わらない。

 代表取締役の加納裕三は、「登録ユーザーは20万人。月間取引額は450億円以上」と説明。「取引システムは自動で動いていて、ここのスタッフ業務は主にカスタマーサービス」であり、取引所の信頼を担保するため、「資本金は約40億円を確保している」とアピールする。

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