テレビ討論後、握手するトランプ共和党大統領候補(左)とクリントン民主党候補=9月26日(現地時間)、米ニューヨーク州(写真:gettyimages)
テレビ討論後、握手するトランプ共和党大統領候補(左)とクリントン民主党候補=9月26日(現地時間)、米ニューヨーク州(写真:gettyimages)

 初のテレビ討論会で、米メディアは、クリントン候補に軍配を上げた。しかし、激戦州の支持率では劣勢に立ち、“トランプ大統領”の可能性がなぜか高まっている。

 9月26日、90分間生放送された討論会で、ドナルド・トランプ共和党大統領候補が、口角泡を飛ばし、虚言を吐こうとも、ヒラリー・クリントン民主党候補は、厳しい表情を見せずに笑みを絶やさなかった。冒頭30分で、ほぼ毎分ごとに発言を遮られても、言いよどむことなく、自分の主張を最後まで言い切った。

 嵐のような「マンターラプト(マン+インターラプト=男性が女性の邪魔をする)」を、生放送でここまで美しく乗り切るのは、彼女にしかできないだろう。

●報道は「クリントン勝利」

 しかも、トランプが投資していた「ミス・ユニバース」の勝者だったにもかかわらず、体重が増えて「ミス豚ちゃん」とトランプに呼ばれた女性の話を最後の数分で披露し、女性差別主義者であることを印象付ける完璧なとどめを刺した。

 初の討論会直後のCNNの調査で、視聴者の62%がクリントンが論戦に勝利したと答えた。もちろん、新聞の見出しは「ラウンドワン、クリントン勝利」だった。

 討論会の翌日は「全米有権者登録デー」。有権者が、各州で異なる締め切りまでに登録する仕組みで、それをしていないと投票できないこともある。このため、クリントン本人ほか、ミシェル・オバマ大統領夫人、夫のビル・クリントン元大統領、娘のチェルシーと、「オールスター」が全米の激戦州に散らばり、支持者に登録を訴えた。これに対し、トランプは、本人とマイク・ペンス副大統領候補の2人だけが集会をこなし、多勢に無勢とも見られる。

 ところが、だ。激戦州でクリントンが優勢を維持してきた南部ノースカロライナ州、中西部オハイオ州、アイオワ州の3州で、トランプの支持率がわずかながら上回り始めた(米紙ニューヨーク・タイムズによる)。

次のページ