「9~11号の三つの上陸台風が、いつもの台風発生場所より北寄りに発生したのは、モンスーン渦の影響です。実は、1950年8月も今年と似たような様相でした。同じようにモンスーン渦が発生したとみられ、日本のすぐ南海上でたくさんの台風が発達し、この月だけで6個上陸したのです」

 確かに異変は台風の経路だけではない。発生した数に対して、日本に影響を及ぼす台風の数がとても多くなっているのだ。

●上陸ペースは平年の倍

 今年発生した台風は、本稿執筆時点で13個。そのうち日本に接近したのが4個、上陸は5個に達している。平年が、発生数25.6個で接近11.4個、上陸2.7個だから、現時点でまだ約半分の発生数で、上陸の数が倍になっている計算だ。

 今年の夏は、日本列島を南から広く覆うはずの太平洋高気圧の張り出しが弱い一方、大陸側から高気圧が張り出す気圧配置となり、結果的に高気圧の割れ目となった日本付近が「台風の通り道」になりやすかった。

 この先はどうなるのか。

 日本テレビの番組で気象解説を担当する気象予報士の杉江勇次氏によれば、最近になって気圧配置がようやく通常の形になったため、8月のような異例の台風発生パターンはほぼ解消したとみてよいという。

「しばらくは残暑あり、秋雨前線もある秋らしい天気が予想されます。台風の発生場所も、北に偏った状態から、フィリピン沖などいつものエリアの可能性が高まってきました。沖縄から日本列島を突っ走っていく、秋らしい王道のバナナカーブのルートをイメージでき、例年通りの秋の台風シーズンを迎えるとみています」(杉江氏)

 いずれにしても、引き続き各地で秋台風への備えが必要だ。(ライター、気象予報士・加藤順子)

AERA 2016年9月19日号