2016年の台風は東北・北海道をめざす?/気象庁HPから作成
2016年の台風は東北・北海道をめざす?/気象庁HPから作成

 年初から半年間、まったく発生しなかったと思ったら、8月からの1カ月余りで8個もの台風が日本列島に接近・上陸した。この異変、いつまで続くのか。

 今年は台風の様子がなんだかいつもと違う。

 8月21日に台風11号が道東に上陸し、河川の氾濫被害などを引き起こした後、わずか10日の間にさらに二つの台風が北日本の太平洋側を立て続けに襲った。

 なかでも8月30日、風速25メートル以上の暴風域を伴ったまま、観測史上初めて東北地方の太平洋側に上陸した台風10号は、北日本に深刻な爪痕を残していった。西日本や東日本に比べて大雨が少ない北日本では、地面の状態も社会や人の備えも、台風や集中豪雨などの大雨災害には弱い傾向がある。

●被害全容が見えにくい

 台風10号の被害は、岩手県と北海道で亡くなった人の数が21人に上ったことが9月8日に明らかになった。人的被害のほかにも、コメやジャガイモなど収穫直前の「秋の味覚」を直撃するなどの被害が発生しているが、被害の全容がなかなか見えてこないのが、今回の台風禍の特徴でもある。北日本の人にとってはそれだけ、不意打ちで、想像以上の台風の勢力だったといえる。

 この台風10号は不思議なルートをたどったことも、大きく話題になった。

 いつもの台風なら、日本付近を覆う夏の高気圧の辺縁の風に沿って北上したり、上空のジェット気流に乗って東に進んだりするのに、台風10号は逆向きに進路をとったのだ。本州の南海上を西に向かい、沖縄の東海上で停滞後、Uターン。再び東に向かった。

 こうした進路に影響を及ぼしたとされるのが、8月上旬に発生していたといわれる「モンスーン渦」と呼ばれる大きな低気圧性の循環だ。台風の発生メカニズムを研究している横浜国立大学の筆保弘徳准教授(気象学)はこう話す。

次のページ