オリパラ教育は、各五輪の組織委員会が内容を決め、国際オリンピック委員会(IOC)と連携して行われる。例えば、リオ五輪のテーマは「トランスフォルマ(転換)」。ブラジルの体育の授業は、施設や設備の関係からサッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボールの4競技に偏る。それ以外の競技への理解が不足しているため、オリパラの競技を体育の授業に取り入れた。

 20年東京五輪のオリパラ教育は「ようい、ドン!」がテーマ。ボランティアマインドを育て、障がい者への理解や豊かな国際感覚を得ることなどを目標に、オリパラ教育が行われる。

●「整列文化」もレガシー

 実は、オリパラ教育の原点は1964年の東京五輪。筑波大学の真田久教授は言う。

「海外旅行などは高価で、ふつうの人には考えられない時代。日本人は動く外国人をあまり見たことがなかった。海外の選手をどう迎えるかが課題でした」

 学校のほか公民館でも、「街をきれいに」「外国人に道を聞かれたら親切に」といった啓蒙活動が行われた。清潔とは言えなかった当時の東京。五輪を前にごみの定期収集が始まってその環境は激変した。いまや日本人の美徳とされる「整列文化」も64年東京五輪のレガシー(遺産)だと言われている。筑波大学で「おもてなし学」を教える江上いずみ客員教授によれば、

「異文化を受け入れるとともに、日本を正しく理解してもらうことで、海外の人をきちんとおもてなししたいという思いがありました」

●普段の授業の素材に

 日本はその後もオリパラ教育の先進国。五輪開催地の学校がそれぞれ応援する国や地域を決めてその国のことを学んだり、選手らと交流したりする「一校一国運動」を始めたのは、98年の長野五輪からだ。IOCも高く評価し、いまも続いている。

 港区立御成門中学校ではオリパラ教育を機に、徒歩圏にあるスウェーデン大使館との交流を深めている。

 石鍋浩校長は言う。

「10年前と比べて子どもたちが内向きになってきた印象がある。五輪は子どもたちの目を外に向けると同時に、日本の伝統や独自の文化を見直し、自己肯定感を持つきっかけになる。生徒の興味関心の芽を育てたい」

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