学校現場は、このままでいいのか(※イメージ)
学校現場は、このままでいいのか(※イメージ)

 体力の続く限り授業をし続けたい。教師としてのキャリアのゴールを尋ねると、そんな声をよく聞く。管理職のなり手が少なく、「一生ヒラ」「一生非正規」も多い学校現場は、このままでいいのか。

 個人面談で保護者に質問された瞬間、当時31歳だった女性教員(38)はヒヤッとした。

「先生、5月まで何されてたんですか?」

「……ちょっとお休みをいただいておりまして……」

 それ以上は突っ込まれず、ひそかに胸をなで下ろした。保護者は知らない。小3の子どもの担任が、臨時の教員であることを。初めて働く学校で、初めての担任をしていることも。音楽の授業しかしたことがないのに、算数や理科を教えていることも。

 女性は大学で教員免許を取り、卒業後は塾講師のアルバイトなどで生計を立てていた。26歳の時、公立小の学習補助のアルバイトを半年間かけ持ちした。時給850円。その後、小学校の臨時的任用の音楽教員の依頼が、途切れることなく舞い込むようになった。

●臨時で年収500万円

 5校目で、3年生の学級担任になってほしい、と言われた。音楽だけを教えていたかったが、「断ると次の任用の話がこないかも」と考え、しぶしぶ引き受けた。

「お粗末な授業をしていたと思います。長くは勤めない前提だから、一日一日を終わらせることに必死でした」

 臨時的任用の期間は、正規の教員が復職するまでだ。翌年度は違う小学校で働くことになり、4月から担任を持った。12月に正規教員が復職することになり、急に任用期間が打ち切られた。

「全校集会で子どもたちにお別れのあいさつをさせてほしい」

 と校長に頼んだが、「子どもが動揺するから」と却下された。泣きながらその学校を後にした。

 担任を断ったら仕事がこないというのは杞憂だった。勤めている地方都市では、1学年に1人は臨時的任用の教員が担任をしている。正規教員がうつなどで休業して長引くケースが多いからなのか、学級崩壊をさせた教員にさえ、次の依頼がくる。民間企業と比べて恵まれている退職金がもらえないのは痛いが、年収は約500万円で悪くない。年度末になると、臨時の仲間同士でLINEが飛び交う。

「次の話、きた?」

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