今年6月から8月にかけて、フランスの女性監督による作品が毎月、劇場公開される。毎年6月に行われる「フランス映画祭」を主催する、ユニフランス東京の手束紀子支局長は語る。

「女性監督という言葉から連想される緩やかな世界観というよりは、強い意志を感じる作品が多い印象を受けます」

●俯瞰し冷静に見つめる

 女優として活動した後、もっと別の形で映画に関わりたいと、監督としてのキャリアをスタートさせる女性も多く、強い思いが凝縮されている。

 エルギュヴェン監督のように、移り住んだフランスで高度な映画教育を受け、初期の作品で出自をテーマに選ぶ傾向は男女問わず多く見られるという。

 7月公開の「めぐりあう日」の監督であるウニー・ルコントは、9歳の時に韓国からフランスに養子として渡り、衣装デザインのアシスタントや女優として小さな役を演じた後、監督に転身した。孤児であった体験を主人公に投影した「冬の小鳥」で2009年に監督デビューを果たした。「めぐりあう日」は、実母を知らずに育ったフランス人女性が、生まれ育った孤児院のある町に引っ越すところから物語が始まる。

 両作品を配給するクレストインターナショナルの渡辺恵美子代表によると、「冬の小鳥」の後、養子縁組というテーマから一度離れてみては?という周囲からの声もあったが、ルコント監督はこのテーマにこだわり続けたという。「めぐりあう日」では、自身の体験と作品の間にわずかな距離が生まれた。

「俯瞰して、冷静に自分を見つめられるようになったのでは」(渡辺さん)

 観れば無条件に明るく元気になる、いわゆるガールズムービーとはちょっと違う。人生に起こったすべてのことを受け入れ、骨太かつ洗練された作品が生まれている。(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2016年6月13日号