新宿御苑のほど近くにある「模索舎」は1970年に営業開始。政治党派の機関紙、社会運動関係のパンフなど珍しい出版物も多く扱う(撮影/今村拓馬)
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新宿御苑のほど近くにある「模索舎」は1970年に営業開始。政治党派の機関紙、社会運動関係のパンフなど珍しい出版物も多く扱う(撮影/今村拓馬)

 学生時代の教科書以来、憲法はとんとご無沙汰という方も多いかもしれないが、知らずにいるのも怖いご時世になった。幅広い本から、憲法を知ろう。

 憲法関連の本への巷の関心はどの程度あるのだろう。まずは大学生。全国大学生活協同組合連合会調査による最近の売れ行きベスト10(全国10大学)を眺めてみる。就活本やおなじみのベストセラーが目立つなかで憲法関連は皆無。むしろ、戦後民主主義の黎明期に育ち、改憲に危機感を抱くシニア世代が手に取ることで売れ行きが伸びる、という説がある。そこであるユニークな書店に出向いた。

 その名は「模索舎」(東京都新宿区)。ミニコミや小流通出版を取り扱い、ここにしかないものが豊富にそろう。

 3.11以降のデモ文化の盛り上がりで、さぞや新しい客が増えたのではと思って常勤スタッフに話を聞いてみた。

「変化はないです。学生はまず来ないし、最近のデモ参加者は模索舎なんて知らないようです。ここ数年は、ツイッターのやりとりとネット上の情報だけでOKで、本への関心が薄れている」

 なるほど、ではどんな人たちが、模索舎に来るのだろう。

「中高年が多いですね。ここでは憲法とか民主主義の解説というより運動に直結するもの、少し前までは反グローバリズムや運動史の検証、記録ものも出ます。カウンターカルチャーとかマニアックでアナーキーなジャンルの比率は、普通の書店とは全然違うでしょう」

 そんな模索舎の単行本コーナーで長年奮闘する出版社の一つに現代企画室がある。そこで30年以上も多くの本の編集・翻訳を手がける一方、自身も書き手として発信し続けてきた太田昌国さんにお話を伺った。

「出版業という立場としては、ここ数年直面する問題で手応えを感じて本をつくるということはほとんどないです。昨年来の安保や民主主義関連本も結構出ていますが、出したい本はまた別にありますから」

 そこで太田さんに「憲法」に関連する本を3冊挙げてもらった。

(1)『要石:沖縄と憲法9条』(C・ダグラス・ラミス著、晶文社)
(2)『琉球共和社会憲法の潜勢力』(川満信一/仲里効編、未來社)
(3)『戦争がつくる女性像』(若桑みどり著、筑摩書房)

「9条の意義と『限界』を沖縄の歴史過程と現状に照らして考察することは必須です。(1)は元米海兵隊員の独自の反戦・反軍論。(2)は1981年に構想された琉球の一詩人による絶対平和論の再検討。9条堅持の立場を狭い政治・軍事の枠から解放し、広く根源的に捉え返すためには(3)をおすすめします」

(ライター・田沢竜次)

AERA 2016年5月16日号より抜粋