保坂 小規模保育の定員拡大で受け入れられるのは、世田谷区では限られていますね。認可保育園のほうは来年度は23園増やす計画ですが、住民の反対運動などによって、見込んだ数だけ開園できない可能性があります。

駒崎 保育園を運営していると、パイプ椅子を持って怒鳴り込まれ、身の危険を感じたことも。もちろんコミュニケーションによって近隣に理解を求めることは大事ですが、法律で守ってもらわないとつらい部分もある。

保坂 ドイツでは住宅地にある幼稚園の閉鎖命令がきっかけで、11年に子どもの声を騒音から除外するよう連邦法が改正された。東京都も15年、未就学児の声を騒音の数値規制の対象外とするよう条例を改正しました。

山尾 国会は原則、10歳以上しか傍聴できないんです。今回、待機児童問題を取り上げるのに子連れの保護者の傍聴は認められず、仕方なく私の事務所で会議室を取って中継で見てもらいました。ヤジより子どもの泣き声のほうがよっぽどいいのに!

保坂 この問題では、経団連や経済同友会の意見も聞きたいですね。高度経済成長期の残影で長時間労働がいまだに続き、保育園には延長保育ばかり求められてきましたが、それで日本経済が世界のトップを走ることはもうない。では働き方をどう変えるか。自治体や保育関係者だけでなく、企業も当事者です。

●自己責任にせず声を上げる

山尾 私が多くの保護者と共有したのは、保護者にしかできない子育てと、専門職である保育士にしかできない保育があり、子どもの月齢や年齢によってその両方のバランスを取りつつ育てたいということです。保育を確保する一方で、親が子育てをする時間を確保できることも大事。朝早くから夜遅くまで働くことが当たり前だと、保育士がいくらいても足りません。長時間労働を改善し、親による子育てと専門家による保育の両輪で、子どもを育める社会にしたい。

駒崎 元杉並区長が「育児は親の責任」だと発言したように、子育ての問題を内在化させる圧力が常にあり、自己責任にされがち。子どもを育てながら働くのは当たり前で、それが実現できないのは社会が悪い。「保育園落ちた日本死ね!!!」は、ブログでディスっただけで、総理までパスがつながった。社会の不条理は、声を上げることで変えられるのだと思います。

【待機児童解消の主な緊急対策】
●臨時的な受け入れ強化
国基準を上回る基準にしている自治体に、受け入れを要請(例 保育士数:1歳児数を1:5や1:4にしている自治体は、国基準の1:6に)
●認証保育所などの支援
自治体が支援する認可外施設(認証保育所、保育室など)の運営費の一部や改修費を補助
●積極的認可
客観的な認可基準を満たした場合、自治体が認可するよう徹底
●小規模保育の「3歳児の壁」解消
連携施設を自治体が積極的に設定するよう促す。定員を19人→22人に弾力化し、3歳児以降の継続入園をしやすくする
●「保活」の実態調査
●保育コンシェルジュの設置促進
●緊急一時預かり事業の活用
●送迎バス活用で隣接自治体の保育園利用
●保育士の子どもの優先入園

AERA 2016年4月18日号