駒崎 同感です。物件を探していると、オーナーの6割くらいは保育園の設置に難色を示します。なぜならメリットが薄いから。逆に騒音問題などで面倒を抱えるくらいなら、コンビニや駐車場にしよう、となる。規制を緩和することが保育園が増えることにつながるなら、やるべきです。一方で、子どもの安全や保育の質に関わる規制緩和は絶対にしてはいけない。緊急対策にある、1人の保育士がみる子どもの人数を増やすことには、僕も反対です。

山尾 今回の緊急対策は、保育士の配置人数や保育スペースの面積で国の最低基準を上回る設定をしている自治体に、もっと多くの子どもを受け入れるよう求めています。ここ数カ月、保護者や保育士、事業者の声を訴えてきたのに、出てきたのがこうした保育の質を落とす方向の規制緩和だったので、みんな不安と怒りでいっぱいです。

保坂 世田谷区も、保育士1人に対して1歳児は5人という配置基準にしています。面積基準は、0歳児1人あたり5平方メートルにしていて、国基準の3.3平方メートルを上回る。最近は、そんなことにこだわっているから待機児童が多いんだ、と批判の対象になっています。でも、特別養護老人ホームで受け入れるお年寄りを倍にするために2段ベッドにしろ、という議論にはならないでしょう。

駒崎 ただ、事業者としては、自治体の独自ルールが参入の障壁になるのはもどかしい。世田谷区の場合、0~2歳児の小規模保育施設は、卒園児を受け入れる連携施設を事業者が定めていなければ開設できないことになっています。国は、19年度末までの移行措置や、自治体による調整を求めているのに、独自ルールが厳しすぎませんか?

保坂 私としては小規模保育施設は重要で、つくりたいと思っています。ただ、すでに区内の保育施設の3歳児の定員がパンパンなので、連携施設が決まらないのに0~2歳児の受け入れを増やしても、3歳児以降で預かれる施設がないんです。国の緊急対策は、さらに認可園などの定員を増やすというものです。

山尾 小規模保育をはじめ多様な保育は大事ですが、待機児童対策として定員枠をギリギリ広げるためのツールとして使われると、信頼感がなくなってしまう。子どもにとって最もいい環境だから預けたいという気持ちでなく、「どこにも預けられないからここでごめんね」と保護者が罪悪感を抱えることになる。小規模保育の連携施設がない場合、3歳児以降の継続入園も緊急対策に掲げられていますが、例えば4月6日生まれの子どもなら、4月1日時点で3歳でもすぐ4歳になり、卒園するときにはほぼ5歳。乳児のうちは家庭的な環境で育んでもらうのもいい、という保護者の選択とはかけ離れてしまいます。

●反対運動で開園できない

駒崎 小規模保育の3歳児以降の継続入園は、連携施設がない場合のシェルター的な緊急措置なので、いい規制緩和だと思っています。19人の定員を超える22人までの受け入れ拡大も、人員基準や面積基準の緩和ではないので、保育の質が落ちるわけではない。ただ、プラス3人を受け入れる余裕がある小規模保育施設は多くはなく、効果は限定されそうだということです。

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