「第1戦、第2戦で勝ち点3を取れず、波に乗れなかった。あそこで取れていれば流れは違った」と佐々木監督。元世界女王のなでしこといえども、10日間で5試合をこなす短期決戦でチームを立て直すのは難しかった。

 そこに別の誤算が加わる。豊富な運動量と粘り強い守りで、なでしこの中盤を支えてきた守備的MFの宇津木瑠美(27)=仏・モンペリエ=を、直前にけがで欠いてしまった。 オーストラリア戦で宇津木の代役を務めたのは、宮間あや(31)=岡山湯郷=。得点に絡むのが持ち味の宮間は、身長157センチと小柄。慣れないポジションに回ったことと相まって、ボールの奪いどころとして狙われることになってしまった。

 宮間は中国戦でようやく本来の左MFに戻ったが、なでしこの「頭脳」の起用方法が定まらなかったことも歯車を狂わせた。

 絶体絶命の中国戦では、手数をかけずに前線へロングボールを送るよう求めた佐々木監督の采配に対しても、選手から批判が噴出。試合が終わるころには、チーム内の不協和音が隠せないほど大きくなっていた。

「この試合(中国戦)に負けることが何を意味するのかは自分の中で理解して挑んだ。ただ全ての選手が理解していたかというと、そうではなかった」

 昨年末に引退した澤穂希さん(37)から背番号10を受け継いだ大儀見優季(28)=独・フランクフルト=は、チームメートへの不信感をあらわにした。ところが、こうした苦言を呈したのはメディアの前でだけ。別の選手は「話す場所が違う」と戸惑いを隠さなかった。(朝日新聞スポーツ部)

AERA  2016年3月21日号より抜粋