広い庭を農園として活用し、野菜作りをしながら、住人が交流。管理するシェアスタイル(東京都豊島区)の相談役である岩佐修さんが、趣味の腕を生かして畑作りをサポートする。

 夏になると、ナスやきゅうり、トマト、オクラなどを収穫し、テラスでパーティーもしょっちゅう。冬でもハーブ類や白菜、ブロッコリーが元気に育っている。スイーツ作りが趣味の住人男性が、ハーブを使ったお菓子をみんなに振る舞ったり、摘みたてのミントでモヒートを作って飲み会をしたり。一人暮らしでは味わえない「体験のシェア」は何にも代えがたいとか。家賃は4万6千円から。

 元々は「安さ」が売りだったシェアハウスに、このような特化型が増えているのはなぜなのだろうか。

●高収入者も入居増

 昨今の晩婚化と、シングル層の高齢化がブームを支えている、と分析するのは、同社の山田亮さん。

「ここ数年でシェアハウスを選ぶ人たちが“ローコストを意識した層”から、“人とのつながりや環境意識が高い層”へと変わりました。実際、入居者の年齢層も収入も高めに推移しています。都会的なワンルームで一人暮らしをするよりも、暮らしにコミュニケーションを求める人が増えています」

 シングル時代が長くなることにより、「趣味の時間を有意義に楽しみたい」「共通の趣味を持った友達がほしい」「自然な出会いがほしい」「安心がほしい」などのニーズが高まった。その受け皿の一つが特化型シェアハウスといえるだろう。

 13年には国土交通省が「違法貸しルーム対策に関する通知について」という通達を出したことで、これまであいまいにされていたシェアハウスのガイドラインが事実上、定められた。通達によって、古い一戸建てを改修しての開業がしにくくなったなどの課題も多いが、今後の市場拡大に向けた第一歩になったことは間違いない。

 子育て中のシングルマザーやファーザー、中高年層など、様々な社会的背景を持つ単身者にとっても、特化型シェアハウスで生まれたコミュニティーが心の支えになることも期待できる。

「暮らしの場に人が集うことで助け合えることがたくさんある。シェアハウスは無限の可能性を秘めています」(山田さん)

AERA 2016年3月14日号