「もう以前のようなゆったりした教育現場、部活環境じゃない。家庭環境が複雑化した生徒への対応、授業や行事の増加で教師は疲弊している。このままでは子どもと共倒れになる」

 そんな実態に対応すべく、部活指導の外部委託を推進している地域もある。東京都杉並区が顧問教員の負担軽減を目的に13年度から始めた「部活動活性化モデル事業」だ。民間からスポーツ指導者を外部コーチとして受け入れるもので、区の担当者によると今年度は12校24部活、16年度は16校に広げる計画だという。

 受け入れ先はすべて運動部。サッカー、バスケットボール、テニス、卓球など多岐にわたる。外部コーチは原則的に技術指導のみで、生徒指導は従来通り顧問教員が行う。16年度は予算約3千万円を投入し、週末だけでなく平日の委託も視野に入れる。

「生徒、教員、保護者の部活にかかわる三者全員に良い変化があった」

 そう話すのは、杉並区立和田中学校で立ち上げにかかわり、今年度から同区立井荻中学校で五つの部活に外部コーチを受け入れた森徹副校長だ。

 外部委託は生徒からはおおむね好評。正しい技術や知識を教わるとともに「スポーツの楽しさ」を味わえているという。情報を共有する教員側も生徒に対応できるゆとりができたとの声は多い。

 保護者にも変化が。土日は顧問教員が来ない代わりに、練習にも保護者らの立ち会いが必須になるため、大会応援だけでなく練習での子どもの姿を見るようになった。

「おかげでわが子が頑張っていることがわかったと保護者から言われる。学校だけの部活ではなく、地域に学校を開くきっかけになれば」(森副校長)

(ライター・島沢優子)

AERA 2016年2月29日号より抜粋