人間の腸内には種類の異なる約1千兆個の細菌がすみついており、腸内細菌叢(そう)(フローラ)を形成している。人によって、フローラを構成する細菌の種類が異なることもわかっている。乳酸菌を食事から取り込んでフローラの細菌の種類を変えることで、アレルギーを抑制する細胞が増えるのではないかというのが、この説の概要だ。最近よく聞く「菌活」も、フローラに着目している点は同じ。ヨーグルトの乳酸菌だけでなく、納豆菌や酵母菌、キノコなどの菌類も効果があるといわれている。

 だが、 日本アレルギー学会理事長で国立成育医療研究センター副研究所長の斎藤博久医師は懐疑的だ。

「人間の腸内細菌叢の種類は、生後2~3カ月で定着し、その後はなかなか変化しにくいと言われています。ヨーグルトを摂取するなど食事を変えただけで、細菌の種類が大幅に変わるかは疑問です」

 いまのところ、ヨーグルトの乳酸菌を摂取することでアレルギー症状が改善する、との説を裏付ける根拠は見つかっていないという。

 では、ヨーグルトの摂取は無意味なのかというと、そうでもないらしい。

「ヨーグルトがアレルギーの予防や改善に効くと思い込むのは禁物ですが、では絶対効かないかと言うと、そうとも言えないのが本当のところ。乳酸菌に限らず、腸内細菌とアレルギー疾患発症の仕組みに連関がある可能性を示す論文が存在するのは確かです。この分野はいままさに研究が進んでいるところなのです」(斎藤医師)

(アエラ編集部)

AERA 2016年3月7日号より抜粋