田中久雄氏(中央)の新社長発表会見では笑顔の西田氏(左)と佐々木氏(右)だったが… (c)朝日新聞社
田中久雄氏(中央)の新社長発表会見では笑顔の西田氏(左)と佐々木氏(右)だったが… (c)朝日新聞社

 サラリーマンに「妬み」はつきものだ。それは発奮材料にもなるが、時に対立の種にもなる。東芝転落の背景にも、そんな妬みが影を落としていたようだ。

 財界事情に詳しい経済人の一人はこう言って苦笑いした。

「もしも東芝の西田厚聰元社長が経団連会長になっていたら、東芝はこんなことにならなかったかもしれない」

 少し解説が必要だろう。西田氏は、2010年5月まで経団連会長だった御手洗冨士夫氏(キヤノン会長兼社長)の有力な後継候補だった。当時、西田氏は東芝会長で経団連副会長。米ウェスチングハウスを買収するなど名経営者として注目され、次期経団連会長に期待されていた。

 だが西田氏が財界総理になるには身内に越えなくてはならないハードルがあった。西田氏の先輩、岡村正・東芝相談役が、当時就任していた日本商工会議所会頭を辞める必要があったのだ。岡村氏が会頭を辞任せず西田氏が経団連会長になれば、財界3団体のトップのうち二つを東芝が占めることになってしまう。それでは経済界はまとまらない。

 当時の財界首脳らの見立ては、岡村氏が辞任し、後輩の西田氏に経団連会長の道を歩ませるだろう、というものだった。だが、岡村氏は会頭職を続け、西田氏の経団連会長構想は実らなかった。西田氏が残念に思ったとしても不思議ではない。

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