中国のGDPに占める第3次産業の割合はすでに半分を超えた。10年前より10ポイント増えた。過大な生産設備や在庫を多く抱えてあえぐ伝統的な産業を尻目に、インターネット関連に代表される成長著しい産業の台頭が始まっている。

 消費の貢献度も上がっている。15年の中国の小売総額は05年の約4倍に膨らみ、30兆元(約550兆円)に届く勢いだ。とりわけネットを通じた消費の伸びは著しい。10年前には小売り全体の1%にも満たなかったが、15年は1割を超えた。

 外国旅行にも年1億人以上の規模で繰り出す。15年、日本を訪れた中国人観光客も約500万人と、前年から倍増した模様だ。「爆買い」は見慣れた風景にもなった。人民元が大きく値下がりしない限り、買い物熱は冷めそうにない。

 日本政府観光局(JNTO)北京事務所の伊地知英己所長は「第3次産業では給料が上がっている層が厚い。日本へ旅行する中国人は昨年ほどでないにせよ、個人旅行を含めて今年もまだ伸びる」とみる。中国発を中心とするクルーズ船の日本寄港も、博多港などで15年は前年より倍増した。今年も続々と寄港予定が入っている。

「政治リスク」は緩む方向だ。中国は今秋、念願だったG20を浙江省杭州で開く。皮切りとして、2月下旬に財務相・中央銀行総裁会議が上海である。国際協調への優先度が高まる中、日中関係もじわじわと改善。北京の日本大使館のある幹部は、「中国は景気減速の中で、日本との経済関係はうまく維持したいと考えている」。

 習氏率いる中国共産党の「見えすぎる手」で市場も世論もコントロールしながら、強い経済を目指す中国。その成否は世界経済にとって大きなリスクになる。と同時に、チャンスになり得ることもまた、間違いない。

AERA  2016年1月18日号より抜粋