年末商戦に沸く上海の衣料品店。消費は好調が続くが、その間に供給サイドの改革が進むかが、中国経済の行方を左右しそうだ(写真:gettyimages) @@写禁
年末商戦に沸く上海の衣料品店。消費は好調が続くが、その間に供給サイドの改革が進むかが、中国経済の行方を左右しそうだ(写真:gettyimages) @@写禁

 破竹の勢いだった中国の経済成長が、ここにきて鈍化している。これは日本にとってリスクとなってしまうのか。

 経済専門家の張軍・復旦大学教授によると、現在中国では、安い金利でお金を借りた企業や地方政府の関連組織が、利益を生む投資先を見つけられないまま借金漬けになり、成長の足を引っ張っている苦境にあるという。

 企業同士の取引価格を示す生産者物価指数(PPI)はほぼ4年にわたって下がり続けている。需要を上回る生産が続き、企業の出荷価格が下がり、経営を圧迫する「負のスパイラル」に入っているのだ。中国に進出する日本企業の幹部は明かす。

「赤字を地方政府からの補助金で埋めている企業もあり、本来ならもっと倒産していてもおかしくない。地元政府の指導で、実質的に失業者を抱えさせている場合もある」

 習指導部がもっとも恐れているのは、雇用事情の悪化だ。社会の不安を招き、政権の安定を揺るがしかねないからだ。
 
 2015年末、不穏なニュースが流れた。工場が集積する広東省の公安当局が、工場労働者を助けてきた複数の地元のNGO(非政府組織)の幹部を拘束したのだ。外国の支援を受けて労働争議をあおって社会秩序を乱したとの容疑で、ストライキなどの抗議活動が多発することを恐れての「見せしめ」との見方もある。

 このため、景気減速下でも、最低賃金の上昇は続く。社会の安定と国際競争力──てんびんにかけながら、成長の細い道を模索しているのが実情だ。

 では、中国経済は「リスク」一色なのか。

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