これまでの急激な経済成長は、環境破壊や資源の浪費、格差などの問題を悪化させた。同じやり方を続ければ、そんな「負」の側面を助長してしまう。リーマン・ショック後に実施した4兆元(当時のレートで約57兆円)のような大規模な景気刺激策は避ける方針だ。

 16年の経済政策の運営方針を議論するため、15年12月18日から4日間、北京で「中央経済工作会議」が開かれた。成長の鈍化は「新常態(ニューノーマル)」と呼んですでに容認しているが、製造業の過大な設備や膨大な住宅在庫を減らすことを重視。社会保険料の引き下げなどを通じて企業のコスト負担を減らす方針を固めた。

 しかし、かつての成長路線が残した「過剰」の重荷は生半可ではない。

「中国経済は新常態ではなく、非常態(ノーマルではない)」。

 李克強(リーコーチアン)首相にも意見を具申した経済専門家の張軍・復旦大学教授の指摘だ。安い金利で競うようにお金を借りた企業や地方政府の関連組織が、利益を生む投資先を見つけられないまま借金漬けになり、成長の足を引っ張っている苦境にあるという。

「昨夏までの株バブルは、企業が借金を返すお金を調達するため、株式を高く発行できるようにあおった“政策相場”だった。無理な政策のつけでバブルが崩壊し、無知な投資家に損をさせた」(国有証券会社の関係者)

「人民」につけを回したものの、過剰な借金を背負う赤字企業は減るどころか、景気が減速する中で増えている。

 不動産の乱開発が残した住宅の在庫処分にも苦慮。農村からの出稼ぎ労働者へ住宅を貸し出したり、売ったりしてしのぐ方針で、農村戸籍であっても勤務地である都市で住宅を購入しやすくする戸籍制度の改革も進めるという。これも人民を受け皿にするやり方だが、国が住宅の値決めにまで関与することになりかねない。

AERA  2016年1月18日号より抜粋