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 突然、窓ガラスが割れて、不正を働いた外交官が撃たれた。

「窓の外だ」

 見下ろすと、女性型サイボーグが不敵な笑みを浮かべてゆっくりと高層ビルの間を落下していく。ただ、何かおかしい。本来は体に隠れて見えないはずの背景、ビルの窓の明かりや環状道路を車が走る様子がその体に映し出され、次第に周囲に紛れていく。最後は完全に景色に溶け込み、姿が見えなくなった。

「光学迷彩……」

 居合わせた男性がこうつぶやくところで、場面が切り替わる。人気SFマンガ「攻殻機動隊」アニメ映画版のワンシーンだ。

 これにヒントを得て、東京大学大学院情報理工学系研究科の稲見昌彦教授が開発したのが写真の「光学迷彩」、つまり、透明人間になったかのように見えるマントだ。誰でも一度は、「自分が透明人間になったら」と夢想したことがあるだろう。小説や映画も、繰り返し透明人間を描いてきた。例えば、昔話に出てくる「天狗(てんぐ)の隠れ蓑(みの)」も透明人間になる「技術」の一つだ。

 稲見教授考案の「透明人間」技術は、プロジェクターとカメラとコンピューター、光を拡散せずにそのまま反射させる「再帰性反射材」という特殊な素材でできたマントの組み合わせで実現する。実際に体が透明になるわけではない。

「背景を立体的に映し出せれば、あたかも透明になったように見えますよね」(稲見教授)

 再帰性反射材とは、光が入ってきた方向にだけ反射する素材で、道路標識やスポーツシューズに使われる反射板に近い。稲見教授は言う。

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